スティービーとウィル

gakus2007-01-16

 全米の賞レースをにぎわせているウィル・スミス主演の『幸せのちから』(1月公開)は、実話に基づくヒューマン・ドラマ。ホームレスから億万長者にのし上がった実在の人物の、妻との別居から再就職までの短い期間を、実にうまくドラマにまとめている。ウィル演じる主人公の原動力となったのは、7歳になる息子にひもじい思いをさせてしまう情けなさや自分への怒り。時間をまったく無駄にせず、とにかくしゃかりきに働き続けるその姿は、父親の鏡というべきか。HARDEST WORKING MANでありました。

 音楽はソウルものが多くて、ロバータ・フラックの「明日に架ける橋」のカバーは泣かせるフィーチャー。またスティービー・ワンダーが2曲使用されていて、妻が家を出ていくシーンでは「JESUS CHILDREN OF AMERICA」、株式仲介修行時に大会社のCEOに子連れで接近するシーンでは「HIGHER GROUND」が聴こえてくる。

 それにしても、ウィル・スミスは1970年代のスティービーが相当好きなようである。『アイ、ロボット』で「SUPERSTITION」を使ったのは以前記したとおり。前の『最後の恋のはじめ方』でも「DON'T YOU WORRY 'BOUT THINGS」がフィーチャーされていた。いずれもウィルが主演のみならずプロデュースを兼任した作品でもあることを思うと、彼が選曲に意見していてもおかしくないし、スティービーの素質が開花した1970年代前半のナンバーに、自身もアーティストであるウィルが惹かれるのは納得がいく。

 ジャケは「JESUS CHILDREN OF AMERICA」「HIGHER GROUND」、そして「DON'T YOU WORRY 'BOUT THINGS」を収録したSTEVIE WONDER、1973年の名盤「INNERVISIONS」。「HIGHER GRPUND」はヒット曲だからともかく、すべてB面収録曲であることにウィル・スミスのコダワリを感じるのは深読みのしすぎ?