’68はグロの年

gakus2007-04-10

 『ダーティハリー』の殺人犯のモデルとなり、60年代末以降、サンフランシスコを震撼させた謎の殺人鬼、通称ゾディアック。この未解決事件のシリアルキラーをめぐる刑事や記者たちの人間模様を描いた『ゾディアック』が、6月に日本公開される。監督は『ファイト・クラブ』のデビッド・フィンチャー…だからといって『セブン』のような猟奇全開の映画ではない。

 この殺人鬼の特異なところは、脅迫状や手紙、暗号を送り続け、メディアを通して自身をアピールしたこと。そんなさまざまなアイテムを解読することに取り付かれ、翻弄され、破滅へと向かう記者や刑事たちの狂気的な執心が、この映画の肝となる。テイスト的には、ユーモアを抜いた『殺人の追憶』のような感じ。

 オープニングはTHREE DOG NIGHT『EASY TO BE HARD』。続いて(劇中では)最初の犠牲者となる女の子のカーラジオから流れるDONVAN『HURDY GURDY MAN』で、60年代末の空気を濃厚に搾り出す。ちなみに『HURDY GURDY MAN』はエンドクレジットで再登場。愛の歌を歌うというハーディ・ガーディ・マンだが、ここではそんな歌詞も皮肉に響く。

 『HURDY GURDY MAN』は最近『ボビー』でも耳にしたが、この映画で描かれたロバート・ケネディが殺されたのは1968年。そしてゾディアックが最初に殺人を犯したのも同年。ついでにキング牧師が暗殺されたのもこの年。いびつな年だったんだな、と改めて思う。

 どうでもいいけど、この翌年ROLLING STONESはボストン絞殺魔を題材にした『MIDNIGHT RAMBLER』をレコーディングする。見ていて時代的に、この曲が連想されたのだが、劇中で指摘されるゾディアックの誕生日は寄寓にもキース・リチャーズと同じ日だった。

話を音楽に戻すが、劇中ではこの他、シスコ出身のSLY & THE FAMILY STONE『HIGHER』がバーで流れていたり、MARVIN GAYE『INNERCITY BLUES』が70年代の時間の経過とともにフィーチャーされるなど、時代性をうかがわせるセレクト。

ジャケはやっぱりDONOVANかな、ということで、以前載せた名盤『HURDY GURDY MAN』ではなく、ここでは1969年リリースのベスト盤を。

ゾディアック 特別版 [DVD]

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