アメ公にはわかんねえ!?

gakus2007-10-15

 自分はサッカーには詳しくないんだけれど、『ペレを買った男』(12月公開)は、なかなか楽しく見ることができた。1970年代のニューヨークに誕生したプロサッカー・チーム、ニューヨーク・コスモスの軌跡をたどるドキュメンタリー映画です。

 サッカー不毛の地に超豪華クラブ・チーム築き上げたコスモスのオーナー、スティーブ・ロスのサッカーに懸けた情熱を追う本作。アマチュア同然だった米プロ・リーグにペレを呼び寄せ、さらにベッケンバウアー、アウベルトといった世界的な選手を引き抜き、チームを全米ナンバーワンの座に押し上げ、1970年代末、全米のサッカー・ブームはピークを迎える。しかし、1980年代に入ると人気は下降し、84年にチームは解散、その後リーグも消滅する。しかし、当時の試合を見ていた子供たちは90年代に入ってアメリカのサッカー界を支えるようになる。そしてロスが夢見ていた米国でのワールドカップ開催は1994年に実現。そのとき、彼はすでに世を去っていた…。

 と書くと美談に思えるし、映画そのものも、その地点に着地しているのだが、一方ではロスが札ビラを切って海外から有名選手を呼び寄せた事実や、チームのドロドロの内情も明かされる。イギリス人監督(『LIVE FOREVER』のジョン・タウアー)らしい風刺的な視点が、そんなところに確認できる。

 音楽は主に70年代のファンキー・ミュージック主体で、コスモス発足時のシーンで流れるJAMES BROWN“THE BOSS"を筆頭に、KOOL & THE GANG、SUPREMES、Jr. WALKER、DONNA SUMMERといったアーティストのノリのよい曲が多数フィーチャーされる。そんな中で、この面でもイギリス人監督らしいセレクトが。PRIMAL SCREAM“ROCKS”が有名人好きのロスの派手な交遊録を紹介するエピソードで流れ、またTHE JAM“PRECIOUS”がサッカー・リーグの全米中継開始後の盛り上がりを紹介する映像にかぶさる。どちらも、選曲の整合感を損なわないところがミソ。

 ジャケはTHE JAM、1982年リリースの英盤12インチ・シングル『TOWN CALLED MALICE』。このB面に“PRECIOUS”のロング・バージョンが収録されている。