緊張するライブ映画

gakus2008-08-20

 ルー・リードが1973年に発表した3枚目のソロアルバム『BERLIN』(画像)は商業的不振により、その収録曲がライブで演奏される機会はほとんどなかった。が、2006年このアルバムの全曲を演奏するというルー・リードのライブが企画され、その模様を『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督がフィルムに収めた。この映画『ルー・リード/ベルリン』が9月に日本公開される。

 アルバム『BERLIN』は、ベルリンを舞台に娼婦キャロラインとバーの歌手ジム、そして歌い手である"俺”の三者のドラマを紡いだもので、一応はコンセプト・アルバム(ルー・リード本人はコンセプト・アルバムとは認めてないんだけど)。"俺”はバイセクシャルで、キャロラインとジム、両方に心ひかれながらジャンキー暮らしをおくっている。キャロラインは子供を役人に奪われ、やがて自殺してしまう。要約すると、そういう内容のアルバム。

 ルー・リードはいつものように仏頂面でプレイを続ける。バックバンドとの連携も見事。個人的にゾクゾクしたのは"CAROLINE SAYS I"の後半、ギタリストによるノイジーなカッティング。全体的に地味なアルバムだが、この部分は鳥肌モノだ。

 シュナーベルはこのコンサートの舞台演出も手掛けていて、ステージ後方のスクリーンにはキャロラインのイメージが映し出される(キャロラインを演じているのは『潜水服〜』にも出演していたエマニュエル・セニエ)。リードを筆頭に職人ヅラしたムサい男たちがステージ上に立っているせいか、彼女の色気はひときわ印象深い。

 個人的な話になるけれど、自分はこのアルバム、学生のころにリードのセカンド『TRANSFORMER』と一緒に買ったのだが、当然のように頻繁に聴いたのは『TRANSFORMER』の方。『BERLIN』は"THE KIDS"の子供の泣き声のSEがなんだか怖くて、積極的に聴く気になれなかった(このアルバムとDAVID BOWIEの『LOW』のB面は、夜中にひとりで聴くのが耐えられないアルバムだと思う)。今回のライブで、泣き声が聞こえてくるんじゃないかとドキドキしてたら、案の定、SEで聴こえてきて"うわーっ”てな気分に。

 とにかく、ライブ映画として緊張して見れたことは間違いない。全曲を終えた後、ルー・リードはアンコール的に3曲をプレイするが、最後に演奏したのは"SWEET JANE"。この曲が始まると同時にエンドクレジットが流れ出す。そして曲の締めの部分、リードはギターのカッティングのリズムをミスって一瞬舌を出して苦笑い。最後の最後に緊張が解けました…。