夫婦随唱

gakus2008-09-05

 アイルランド出身の若手女流作家セシリア・アハーンの小説を映画化した『P.S.アイラヴユー』(10月公開)は女性向けのラブストーリー。夫と死別し、そのショックから立ち直れないニューヨーク在住の女性(ヒラリー・スワンク)の元に、ある日突然夫からの手紙が届く。生前、夫は自分の死を予期し、彼女のために定期的に手紙を届け、あるメッセージを伝えよとしていた。ヒロインは夫からの手紙に従って行動し…。ラブシーンやら愛をささやくセリフやら、見ていてテレ臭くなる描写が多々あるけれど、周囲の女性からすすり泣きがサラウンドで聴こえてきたから、需要はあるのだろう。夫役のジェラルド・バトラーに“レオニダス王みたいに気張ってセリフ言ってくれんかなあ”とか、ヒロインに恋するバーテンにふんしたハリー・コニックJr.に”舌でナイフ舐めないかなあ”などと、逃げ場を求めている自分がいた。

 意外と逃げ場となってくれたのが音楽で、冒頭からTHE POGUES"LOVE YOU TIL THE END"がかかり、スワンクとバトラーの夫婦喧嘩のシーンになだれこむ。バトラーふんする夫がアイルランド出身という設定のせいかな…と思ったら、夫の葬儀のシーンで"故人の好きな曲”をという神父の挨拶に続いてクリスマスソングの定番”FAIRYTALE OF NEW YORK"が流れ、やっばりと納得。カースティ・マッコールとシェーン・マクガワンが罵り合う2番の歌詞も流れるので、冒頭の夫婦喧嘩のエピソードも活きてくる。ちなみに"LOVE YOU TIL THE END"は、中盤の回想シーンでバトラーがギターの引き語りをしながら歌ってもいる。

 これまた回想シーン、カラオケバーでバトラーが歌うのはWILSON PICKETの”MUSTANG SALLY"。『ザ・コミットメンツ』を思い出してしまった。そして、夫に”彼女は度胸がない”と挑発され、怒りとともにステージに上がったスワンクはPRINCE"GET OFF"を歌う。この後スワンクは機材に足を引っかけてすっ転ぶのだが、ヒロインは劇中でやたらとコケる。

 アイルランドに飛んだエンディングでかかるのはFROGGING MOLLY”IF I EVER LEAVE THIS WORLD ALIVE"で、これまたアイリッシュトラッド。後半ビートが速くなり、エンドクレジットへ。エンドクレジットによると、この後JAMES BLUNTの曲がかかるはずが、日本公開バージョンは徳永英明の曲に差し替えられている。

 あ、もちろん有名なタイトル曲もカバー・バージョンでフィーチャーされます。

 ジャケはザ・ポーグス、"LOVE YOU TIL THE END"を収めた1996年のアルバム『POGUE MAHONE』。シェーン脱退後の唯一のオリジナル・アルバムで、自分もあまり聴いていないのだが、バトラーさんは熱狂的なファンだったのか、歌えるほど聴きこんでいたようです。