ウォー中

gakus2010-01-19

 『アバター』も、昨日記した『マイレージ、マイライフ』も面白いし好きなんだけど、個人的に賞レースがらみの作品でプッシュしたいのはキャスリン・ビグロウ監督の久々の日本公開作となる『ハート・ロッカー』(3月公開)。ここではバグダッドで爆弾処理に挑む兵士たちの日常が、圧倒的な緊張感を伴って描かれる。

 冒頭”戦争は麻薬である”というテロップが出るが、主人公の爆弾処理の専門家ジェームズ(どこかで見た顔だと思ったら、『ジェフリー・ダーマー』でタイトルロールを演じていたジェレミー・レナー!)にとって、それはまさに刺激的なアイテムだった。以後、それを裏付けるエピソードが語られる。恐怖を超越したかのように爆発物に挑み、仲間にスタンドプレイを責められるが、どこ吹く風。自爆テロや、死体内臓爆弾などの戦争の悲惨さを次々と目の当たりにするも、その度に感覚がマヒしていくかのようだ。着任期間はひと月半だが、それが終わってもジェームズには安らぎの時は訪れず……。スリルはもちろん、戦場でしか生きることのできない男の悲哀も強烈なインパクをあたえる力作。キャスリン・ビグロウは女流らしからぬ硬派な語り口で知られているが、今回はオトコマエ演出の極みで、『ハートブルー』を久しぶりに見直したくなった。

 さて戦争ジャンキーのジェレミーの部屋では、常にMINISTRYのナンバーが大音量で鳴っている。初登場のシーンでは“Fear (Is Big Business)”。戦争というビッグ・ビジネスの中で、一個のコマとなった男が”恐怖”を失っている皮肉。また、仲間と酒を飲みながら本気で殴り合いごっこをするシーンでもMINISTRYの別の曲が。正気じゃない遊びをする人たちのBGMにはうってつけ!? ともかくハードロックと呼ぶにはうるさすぎるサウンドに神経を逆なでされる。

 ジャケは"Fear (Is Big Business)”を収めたミニストリー、2007年のアルバム『RIO GRANDE BLOOD』。

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