オタク・オヤジのための刑事ドラマ

gakus2010-08-09

 ケビン・スミス監督、日本での久々の劇場公開作『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』(9月公開)は、スミスが俳優として出演した『ダイ・ハード4.0』が縁となったのか、ブルース・ウィリスの最新主演作でもある。

 ウィリスふんするニューヨーク市警の刑事は、妻の浮気が心配でしょうがない相棒(トレイシー・モーガン)とヌルい毎日を過ごしている。ウィリスもまた家庭で問題を抱えており、別れた妻との間に生まれた娘の挙式を控えているが、式の費用を出してやれる余裕がない。仕方なく、激レアのベースボール・カードを売ろうとするが、これを強盗に奪われた上に、カードは野球オタクであるメキシカン・ギャングの手に渡ってしまう。ウィリスは相棒と共に、カードを取り返すために命懸けの作戦に出るが…。

 スミス作品のファンならば察しがつくと思うが、これはブルース・ウィリスのいつものような刑事アクションではなく、オフビート寄りのコメディ。最初の尋問シーンからしてそれは明らかで、映画オタクであるモーガンが映画のキャラ・マネで容疑者を問い詰めながら、ウィリスがその真似にイチイチ、ツッコむシーンだけで、もう笑える(『ダイ・ハード』のあのお約束のセリフに、ウィリスがシラッと”それは聞いたことがない”と言ったり)。オタク心に響く、いつものスミス作品として見た方が、より楽しめるはず。そもそも撮影時には『チ●コのカップル』という題で呼ばれていた作品だし…。

 で、音楽もいつもながらの80'sセレクトで、冒頭のブルックリンの風景にビースティ・ボーイズ”NO SLEEP TIL BROOKLYN"が重なるところからしてニヤリ。ポイズン"EVERY ROSES HAS STONES"を大げさに響かせてシンミリしたシーンにも、ちょっとしたユーモアをあたえるあたりが旨み。個人的には結婚式のシーンで流れているザ・システム”DON'T DSTURB THE GROOVE"に懐かしさを覚えた。若い娘の結婚式で流すには、懐メロ過ぎる気もするけど…。ともかく今回は80年代後半の曲が多かったような気がするが、この時期はスミス本人がもっともPOPに入れ込んでいた時期なのかもしれない。

 ジャケはTHE SYSTEM、”DON'T DSITURB THIS GROOVE"が収められた同タイトルのアルバム、1987年リリース。以下は余談。この曲、最初はそんなに好きではなかったけれど、当時佐野元春がパーソナリティを務めていたNHK-FMの「サウンドストリート」で耳にして印象がガラッと変わった。というのも佐野元春の”今ノッてるから邪魔しないでくれ”と、曲の意味を簡潔かつリズミカルに紹介した、あの独特の調子が頭にこびりついたから。曲までもが無意味にカッコよく思えてしまったのでした。振り返ると、ラジオDJという仕事はつくづく特殊技能だと思う。


コップ・アウト Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

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