ジェット・ボーイではいられない
昨日のエントリーでちょこっと触れた、『スラムドッグ・ミリオネア』に続くダニー・ボイルの新作『127時間』(6月公開)のお話。
登山家アーロン・ラルストンの実話に基づくストーリー。ロック・クライミング中の落石事故により、岩壁と岩壁の間で腕が落石に挟まり、アーロンはまったく身動きがとりなくなる。万能ナイフで岩を削るも効果はなく、飢えや乾きと闘い続けて127時間後、彼は自分の腕を切り落とすという思い切った手段に出る……。
一見するとサバイバル・ドラマのように思えるかもしれないが、そこはボイル作品、一筋縄でき収まらない。岩壁の間に拘束されている間、アーロンはこれまでのマイペース人生を省みることになる。フラッシュバックする過去と、起こりえたかも知れない未来が、彼の頭の中で去来し、結果的にこれまでの生き方が誤っていたこと悟る。つまり、これはダメ男が成長する物語なのだ。
『ザ・ビーチ』ではこういう思いあがった若いのをシニカルに見つめていたボイルだが、ここではあくまで、その先に続く人生をポジティブに見つめている。ボイル自身も大人になったのかな。
以下、ネタバレありなので読み飛ばしていただければ。
アカデミー歌曲賞にノミネートされた”IF I RISE”は幼少期の自分の姿と向き合うシーンでのフィーチャーで、なるほど印象に残る。個人的に引っかかったのは主人公がワゴン車の中での乱交パーティーを夢想するシーンで流れるELTON MOTELLOの”Jet Boy Jet Girl”。クールなジェット・ボーイ、ジェット・ガールを気どっても、若き日の理想には限界がある。127時間後に待ち受けるのは、その後の人生だ。腕を切り落とした後、自分の腕が挟まったままの岩に向かってアーロンが”ありがとう”とつぶやくのは、さらに続く人生をポジティブに受けたことの証。個人的には、このシーンで泣けてしまった。
エルトン・モンテロのこのレコ・ジャケは以前、乗せたように気がするので、別デザインの7インチ盤を。おそらくコレが1977年リリースのUK盤オリジナル・ジャケ。
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