「モンスター」

gakus2004-06-07

 実在した連続殺人犯である、ひとりの娼婦の破滅への道のりを描いた「モンスター」(晩夏公開)について。

 恐ろしく力の入った作品。同情の余地のないケダモノのような客を殺しては、現金を奪うヒロイン。同性の恋人と一緒にいたいという一念のみで、彼女は次々と犯行を重ねる。無論、殺人という行為自体、肯定できるものではないが、幼いころにレイプされ、故郷を追われ、13歳で客をとるようになるという、凄まじい生い立ちを持つ彼女が“あんたの知らないことを、すべてやってきた。私はそういう人種。あんたとは違う”と言い切ると、異様な説得力を帯びる。どういう人種か? 愛こそすべてだなんて信じらず、希望というものを持てない人間。一見、モンスターのような彼女のボロボロに傷ついた内面に、映画はどこまでも迫ってゆく。ヒロイン、シャーリズ・セロンはこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞したが、それも納得の大熱演。彼女の恋人を演じるクリスティーナ・リッチの、ルーズな甘えん坊ぶりもなかなか良い。

 1980年代の物語ということで、起用された音楽もほとんどが当時のヒット曲。ローラースケート場でかかり、クリスティーナふんする女の子が“好きな曲”というジャーニー/JOURNEYの『DON'T STOP BELIEVEIN'』は、そのまま彼女とシャーリズのキスシーンまでフィーチャーされ、さらにエンドタイトルにも流れるなど、メインテーマ的な扱い。この時代のヒット曲はアレンジ過剰なものが多く、その大げささに苦笑させられることもあるが、この曲のキーボードのキャンキャンしたうるささなんかは、その典型(そうは言っても、当時は好きで、よく聴いてました…)。しかし、そんなある種のダサさが場末感を醸しだしていて、ここではいい感じになっている。
 そういえば、この曲を収録しているアルバム『ESCAPE』から別の曲を起用した最近の某日本映画、ヒドかったな…。今時トレンディドラマでもやらないようなクサい展開で、次にどうなるかが簡単に予想できてしまう。ロックにしても映画にしても、ドラマチックに加工され過ぎていると観ていて(聴いていて)、恥ずかしくなるものだ。

 写真は『ESCAPE』にしたかったが持っていないので、代わりにジョーン・ジェット/JOAN JETTの『BAD REPUTATION』を。このアルバムに収録されている『DO YOU WANNA TOUCH ME』が、バーのシーンで聴ける。『ESCAPE』と同じころのアルバムだけど、こちらは今聴いてもかっこいい。やはりロックンロールはシンプルなほど良いのです。

モンスター 通常版 [DVD]

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