スターは歌う、か!?

gakus2004-07-01

写真は、昨日の日記でもふれた女優ジュリー・デルピーが昨年、発表したCD。フレンチポップと思いきや、英語のナンバーがメインとなっているのは物足りないが、歌いながら笑い出したりする愛らしさも印象的で、聴いててほのぼのしてしまう。

俳優がCD(レコード)を出すのは、著名人なら誰にでもレコーディングさせる人気商法が確立された日本では珍しいことではない。フランスも日本ほどではないにしても比較的そういう傾向が強く、ブリジッド・バルドー、ジェーン・バーキンシャルロット・ゲンズブール等々が歌を吹き込んだりしている。しかしハリウッド・スターとなると事情は異なるようで、レコードを出そうなんて人は、なかなかいない。ミュージシャン志望の人口も多く、アマチュアのレベルでもギョッとさせられるシンガーがワンサカいるアメリカだから、餅は餅屋ということなのだろう。逆に歌手を本業とする人が役者としてデビューすると、演技力に容赦ない批判が浴びせられる傾向にあり、マドンナ、マライア、ジェニファー・ロペスらは女優として評価は日本人が考える以上に低い。それはハリウッドの俳優が演技のプロフッショナルとして特別視されていることの表われでもある。

それでも時々気の迷い(?)は起こるようで、二足のワラジを履こうとするハリウッドスターも現われるから面白い。キアヌ・リーヴスオルタナ・バンド、ドッグ・スターのベーシストをやっているのはあまりに有名。といっても“日本で”有名なだけで、アメリカでそれを知っている人は少なく、コンサートもホール・クラスでやれるのは日本だけ。そしてフロントマンであるはずのボーカルにではなく、ステージ端に磁場が生じ、観客の目線もそこに吸い寄せられるというユニークな状況が起こる。やりたいことをやろう、というアーティスト的気概はわかる。しかし、それが人気商売に転じた途端に作り手の思惑とは関係のない方向に向かってしまうのは皮肉だ。

ビバリーヒルズ・コップ」に出演していたころ、エディ・マーフィがシンガーとして発表したアルバムがビルボードのチャートで上位につけたのは、彼のタレント性の幅広さが世間に浸透していた時期だったからであり、これは異例中の異例。「ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」でミシェル・ファイファーが、「シカゴ」でキャサリン・ゼダ=ジョーンズがプロ顔負けの歌を聴かせたけれど、それでも彼女たちが歌手デビューすることないだろう(たぶん)。役者の立場からすれば、あれも“演技”なのである。

個人的には、役者がCDを出してもアリだと思う。聴いてみたら意外に面白いと思うこともあるから。ブルース・ウィリスがダイハードな男になる以前に発表したアルバムは、彼のブルース志向が表れていて楽しめた。そこそこヒットしたソウルクラシックのカバー『RESPECT YOURSELF』は、けっこうサマになっていたと思う。

ただし、日本でだけヒッソリとアルバムを出し、その経歴を隠したがるケビン・コスナーのようなことはして欲しくないなあ。人気商売してしまいました…という負い目を暗に認めているみたいで嫌だ。人気商売だって、いいじゃないの…。

そういえば、先日CDショップで、ラッセル・クロウのアルバムを見つけて驚いたけど、あれはどうなんでしょう…。