美しき冒険旅行

gakus2004-07-09

 ついに、ついにニコラス・ローグ幻の(単独クレジットでは)初監督作「WALKABOUT/美しき冒険旅行」を観た!

 オーストラリアの砂漠をドライブ中の一家。父親の自殺によって14歳の娘と6歳の息子が取り残され、ひと気のない広大な荒野をさまようことになる。途中、アボリジニ人の少年に助けられ、灼熱の大地で生きる術を学ぶ。そして14歳のヒロインはアボリジニ少年との間で、性の違いを意識することになる…。文明批判としてオチをつけると同時に、思春期特有の未成熟なエロチシズムを伝える作り。ヒロイン、ジェニー・アガターの美しさだけでも、十分酔える。

 特筆すべきは、やはり映像。水鉄砲から発射される水、ハリネズミやトカゲなどのチョロチョロした動き、そして全裸で泳ぐヒロインなどなど、映像でなければ表現できない鮮烈な美しさが随所に顔を覗かせ、ハッとさせられる。映像美にもいろいろあって、写真集のようと評される、いわゆるフェトジェニックなビジュアルを撮れる監督は多いが、この映画の場合はムービージェニックとでもいうべき“動き”の美しさがある。先述のヒロインの泳ぐシーンなんかは、水面の揺れによって変化する体の線が、なんともいえず幻惑的なのだ。色使いの巧みさも技ありで、ローグが当時から映像派にこだわりを持っていたことが確認できる。ホント、ビデオで観たことが惜しくなるほど。スクリーンで、もう一度観てみたい。

 父親の自殺直前、ラジオからロッド・スチュアートの『GASOLINE ALLEY』が流れる。ロン・ウッドとの共作で、マンドリンのリフが印象的なナンバー。“家に帰りたい"とハスキーな声で訴えるロッドのボーカルは、この後の小さな姉弟の過酷な旅を予兆しているかのようだ。

 写真は、この曲を収めた1970年のアルバム『GASOLINE ALLEY』。1970年代前半のころのロッドのボーカルは、フェイセス/FACESの一員として残した曲も含めて鬼気迫るものがあり、いつ聴いてもゾクゾクさせられる。

WALKABOUT 美しき冒険旅行 [DVD]

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