ボンド迷走中

gakus2004-07-29

 ピアース・ブロスナンが007こと、ジェームズ・ボンド役を降板したという。2005年に公開が予定されていたシリーズ21作目がどうなるのか、気になるところ。ソースは以下。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040730-00000001-kyodo-ent

 5代目ジェームズ・ボンド俳優となったブロスナンは17作目「ゴールデンアイ」から4作にわたり主役を張ったが、このころから007シリーズのテイストは目に見えて変化する。アクションはより派手かつ荒唐無稽になり、見せ場自体もフツーのアクション映画の3本分に匹敵するボリュームに。母国イギリスだけでなく、アメリカの製作会社がクレジットされはじめたせいだろうか。いずれにしても、アメリカ市場を意識したシフトチェンジは当たり「ゴールデンアイ」はシリーズ初の全米興収1億ドル突破作品となって、以降シリーズは右肩上がりでアメリカでの数字を伸ばしている。

 派手なアクションは決して嫌いじゃないし、これはこれで面白いと思うのだが、シリーズ本来の魅力であった英国伝統の“粋”が薄れたのは寂しい。ボンドが超人的になるのと反比例してダンディズムが欠けていくような感じ。意地悪な見方をすると、アメリカの観客に迎合しすぎなんじゃないの?と。

 それを端的に表わしているのが、主題歌の変遷。もともと、このシリーズはイギリスで人気のあるアーティストか、歌唱力のあるシンガーが主題歌を歌うという、お約束があった。歴代の主題歌シンガーを振り返ると、3度も主題歌を歌ったシャーリー・バッシーを筆頭に、トム・ジョーンズカーリー・サイモン、グラディス・ナイトなどなど、パンチの効いたボーカルを聞かせる実力派がズラリ。ポール・マッカートニーウィングスデュラン・デュランもリズムのシャキシャキ感が、いい味を出していたと思う。しかし近年は「トゥモロー・ネバー・ダイ」のシェリル・クロウ、「ワールド・イズ・ノット・イナフ」のガービッジと、首をかしげる人選が目立ってきた。クロウもガービッジも嫌いじゃない…というか、むしろ好きなアーティストだが、「007」の主題歌じゃないだろう。本人たちの持ち味を活せないばかりか、無理矢理007的オールドスタイルのアレンジにはめこまれてしまうから、場末のキャバレーミュージックみたいで、どうも品がない。そして「ダイ・アナザー・デイ」のマドンナにいたっては、ファンから“シリーズ最低の主題歌”と言われる始末。ブロスナンが“俺のロックじゃない!”と思って火災報知器を鳴らして辞めたのかどうかは知らないが、もう少し“粋”な線を狙っていただきたいものである。モッズは元々スパイ・ムービーをこよなく愛していたんだし、思い切ってポール・ウェラーだっていいじゃないか。アメリカでは売れないかもしれないけど…。

 写真はパルプ/PULP、1997年のシングル『HELP THE AGED』。このB面には製作者側に却下された「トゥモロー・ネバー・ダイ」の主題歌が、『TOMORROW NEVER LIES』と改題されて収められている。こっちの方がまだ007的のような気がするが…。