ロックンロールのあるべき姿

gakus2004-09-25

 ラモーンズドキュメンタリー映画「END OF THE CENTURY」で、ジョーイ・ラモーンが“ロックンロールのあるべき姿だった”と語ったニューヨーク・ドールズ/NEW YORK DOLLS。その再結成来日公演を、ZEPP 東京で観た。

 再結成とはいえ、ジョニー・サンダースもジェリー・ノーランもい今や故人。再結成後の今年8月にはアーサー・ケインも亡くなった。オリジナルメンバーはボーカルのデビッド・ヨハンセン、ギターのシルヴェイン・シルヴェインだけである。

 開演15分前についたら、何とフロアがガラガラ。寂しすぎるなあと思いつつ前から2ブロック目に陣取って、待つこと10数分。そこそこ周囲は埋まってきたかな、というところで、客電が消えメンバーがゾロゾロと出てくる。“今夜のパフォーマンスをアーサー・ケインに捧げる"というナレーションが終わるや否や、ヨハンセンが飛び出してきて、『LOOKING FOR A KISS』でスタート。ここでまずグッときた。

 以後2枚のアルバムから取り混ぜ、ジャニス・ジョプリンの『PIECE OF MY HEART』、故ジョニー・サンダースのソロアルバム『SO ALONE』(写真)からの曲『YOU CAN'T PUT YOUR ARMS ROUND A MEMORY』のカバーも混じっていたが、後者はシルヴェインが弾き語りで歌いだした瞬間に、またもグッ。ジョージ・ブッシュに捧げると言ってプレイした『FRANKENSTEIN』に『PILLS』、ラストの『TRASH』『JETBOY』『PERSONARITY CRISIS』、アンコールの『HUMAN BEING』まで、1時間半強。どの曲もレコードで聴くよりテンポ早めで、踊り疲れた…。バックの演奏がしっかりしすぎていたせいか、正直、単調になってしまう部分もあったが、聴きたい曲はほぼすべて聴けたので満足。

 ステージ上では、言うまでもなくヨハンセンのキャンプなキャラは断然、光っている。ピンクのシャツにピタT、腰巻付きで、メイクこそしてないが、準オカマといったいでたち。動きは70年代のミック・ジャガーみたいで、イギーにも似てるかなと思ったが、下腹部がぷっくりしているのが玉に傷。シルヴェインは帽子を目深にかぶっていたせいもあり、顔はよく見えなかったが、毒々しいところがすっかりなくなったオジサンでした。他のメンバーも、サム・ヤッファはつなぎ、プロフェッサーと紹介されたキーボード奏者はスーツに帽子の小男で、終始ニコニコしながら演奏している。もう一人のギタリストは、ジョニー・サンダースとは対照的な筋肉質体型。ドラマーは普段着で来ました…といった風情のスキンヘッドの兄ちゃん。こんな具合に、ステージ上のビジュアルからして統制がとれておらず、サーカスの芸人を見ているようで、そういう意味でもキャンプな光景。

 ここで“ロックンロールのあるべき姿”を目撃できたかというと、当然ながら“はい”と答えるのは難しい。ジョーイ・ラモーンが観たドールズと、今日のドールズは、まったく別物だから。ただ、お世辞にもハンサムとはいえないヨハンセンが、まったく似合わない女装をして歌う姿には、改めてロックンロールの力強さを感じた。

 ブサイク、デブ、キ○ガイの他に、バカ、オタク、役立たず…などなど、悪口に人は敏感なものであり、考えすぎるとそれはコンプレックスになる。とりわけ、若いうちはそういう傾向が強いものだが、それを攻撃性やユーモアに変えることができるのが、ロックンロールの強みである。格好は一見、気色悪いが、役者業の効果かボーカルに力強さを増したヨハンセンは、それを今でも体現していた。今日いちばんグッときたのは、そのことだったかもしれない。

それにしてもライブの最中にケータイでステージ撮ってる連中、何とかならんか…。