角材刑事

gakus2005-04-22

 WWFのスーパースターにして、今や客を呼べるアクション・スター、ザ・ロックの、「スコーピオン・キング」「ランダウン」に続く主演第3作「ワイルド・タウン/英雄伝説」(5月公開)を観る。

 1970年代に製作された「ウォーキング・トール」のリメイクで、除隊・帰郷した元特殊部隊員(ザ・ロック)が、故郷の荒廃に怒り、保安官となった悪の根源であるカジノ王に立ち向かうという物語。「ウォーキング・トール」は主人公にふんするジョン・ドーン・ベイカーの仏頂面や2時間を超える長尺もあってヘビーな印象を受けたが、今回のリメイクはロック様主演とあって徹底して陽性で、時にコミカル、そのうえ上映時間は80分強! 相棒役が「JACASS」のジョニー・ノックスヴィルであることも軽いノリを主張する。こんな人たちが法の番人を務めるのはいかがなものか…とも思うが、映画的に楽しければ良し。ノリが軽いぶん、アクションは重量感があるのでバランスはとれている(?)。以前の主演作と同様、ロック様のアクションは銃撃戦のウェイトが軽く、あくまで肉弾戦中心。敵はバンバン撃ってくるものの、モノともせず接近して反撃。パンチや膝蹴りの一撃一撃に重い痛みを感じさせるのがいい。ひと昔前のアウトロー映画のような感じ。そういえば、ブロンソンポール・ニューマンリー・マービンのゲンコツって、何だか痛そうだったよなあ…。

 痛いといえば、ロック様が唯一、武器にするものは“木”。クライマックスでは大きい木の枝を振り回して、敵の斧に対抗。加えて、前半カジノに角材を持って乗り込み、大暴れするシーンのインパクトは凄まじく、配給の方によると「角材刑事」という何ともファビュラスな邦題も検討されたという。手近なモノを武器にするのも、アウトローならでは。

 ともかく、音楽もこれに併せて70年代モノが中心。オープニングのオールマン・ブラザーズ・バンドから一気にレイドバック。「炎のメモリアル」では消防隊員がカラオケで歌っていたオハイオ・プレイヤーズの『FIRE』がストリップ・シーン(お姉ちゃんが消防士のコスチュームをまとって登場)でフィーチャーされる。ドクター・ジョンの『RIGHT PLACE, WRONG TIME』はロック様とノックスヴィルが麻薬の売人をドヤすシーンをファンキーに演出。ラブシーンでかかる歌、どっかで聴いたことがあるな…と思ったらニュー・オーダー『BLUE MONDAY』のカバーで、女性ボーカル、そして当然オリジナルとはまったく異なるフォーキーな雰囲気。

 最近のアクションは、スコアにしても既成曲のフィーチャーにしても、デジタル・ビートで盛り上げるのが常套手段となりつつある。それはそれで良いけれど、こういうブルージーな選曲のアウトロー映画も、やっぱりいいもんだなあと思う。

 ジャケはドクター・ジョン、『RIGHT PLACE, WRONG TIME』収録、1973年のアルバム『IN THE RIGHT PLACE』。