からっぽの世代

gakus2005-05-28

NYパンクのドキュメンタリー映画「ブランク・ジェネレーション」がDVD化された。ライブ映像としてはかなり粗雑なので、DVD化とはいえクオリティが向上しているとは思えないが、併せて収録されているパティ・スミスのドキュメンタリーは未見なので、ぜひ買わねば…。

 これとは異なる同タイトルの映画が、この夏劇場公開される。これはNYパンクのカリスマ、リチャード・ヘルが俳優として主演している劇映画で、製作年はドキュメンタリー版の3年後にあたる1979年。ヘルふんする自身そのままというべきミュージシャンを主人公にして、彼と女性フランス人ジャーナリスト(キャロル・ブーケ)のすれ違う恋愛模様が描かれる。とはいえ、ロマンスの要素が強いわけではなく、むしろ“すれ違い”をとおして“ブランク・ジェネレーション”、すなわち“からっぽの世代”の心情を浮き彫りにしたドライな内容。ドキュメンタリー版が音楽を主体にすることで世代を見つめたものならば、こっちはあくまで映画を撮る側の視点で本質をみつめようとしたものとなっている。

リチャード・ヘル&ヴォイドイズの演奏が収められているのは音楽的に見逃せないポイント。タイトルにもなった『THE BLANK GENERATION』のオープニングのフィーチャーで、まず燃える。CGGBでのライヴ・シーンでも、この曲は演奏されるのだが、リチャード・ヘルふんする主人公はただ騒いでいるだけの観客にいらだち、途中で演奏を放棄する。“あいつらには俺の歌が理解できない。でも、俺自身もわからないんだ”…ブランク(空っぽ)世代の本質が透けてみえる。CGGBでは他にも『LOVE COMES IN SPURTS』がプレイされる。また、『LIARS BEWARE』は開演前のリハーサルのシーンでプレイされ、ヘルのアウアウアウ〜の雄叫びが気持ちよく響く。ヒリヒリするようなギター音が恐ろしくかっこいい。また、スタジオでのレコーディングシーンでは『LIARS BEWARE』をフィーチャー。

 俳優としてのリチャード・ヘルだが、意外にがんばっている印象を受けた。とくに“目”に異様な存在感は、エミネムにも通じるものがある。ヘルに加え、アンディ・ウォーホルが自身の役で出演しているのは貴重。この後ボンドガールに抜擢され、シャネルのイメージキャラにまで出世するキャロル・ブーケがヒロインを務めるなど、ある意味奇跡的なキャスティング。

 ジャケはもちろん、リチャード・ヘル&ヴォイドイズ、NYパンクを代表する一枚『THE BLANK GENERATION』。現行のCDはジャケが異なっていたはず。

ブランク・ジェネレーション [DVD]

ブランク・ジェネレーション [DVD]

Blank Generation~Richard Hell&The Voidoids~ [DVD]

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