なめつくしたドロップの気持ち

gakus2005-08-29

 豊田利晃監督が覚醒剤所持で逮捕されたことで、公開中止の可能性も囁かれていた「空中庭園」が、予定通りロードショー公開されるという。何はともあれホッとした。映画に罪はないし。それにしても、なんだか悲しい事件だった。

 日本映画を積極的に観るほうではない自分でも、豊田監督の作品となると気になるのは「青い春」が好きだったから。松本大洋のコミックの映画化ということで「ピンポン」と同時期に公開され、「ピンポン」が脚光を浴びたのに対して、こちらはB面的なあつかいだったが、個人的には断然「青い春」の方がグッときた。こっちの主人公の方が高校生という設定とはいえ、大人にもあてはまる。「ピンポン」には“飛べない鳥もいるってことだ"というセリフがあったが、「青い春」は飛べない鳥だらけ。そもそも飛べないことを自覚するのが大人になるということでもある。でもガキはそれを信じたくないから暴発してしまうわけで、そこが切なく、さらにリアルだから、振り返ると自分にもそうなる可能性があったんだな…と気づかされたりもする。現役の高校生はそこまで自分を客観的に見れないだろう。となれば、やはり現役ではなくなった人の胸に迫る映画だよなあ、と思えてならない。そういえば、舞台となる高校には“野良犬にさえなれない"なんて落書きまであった。

 豊田監督の“暴発”を責めるつもりはないし、道徳を説く気もない。ただ、もう少し考えて欲しかったと思う。俗に“映画は監督のもの"と言われているが、この言葉が発せられたときに生じる、スタッフや関係者、観客への責任だけは自覚していて欲しかった。

 「青い春」にはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのナンバーが数曲使われている。ジャケは、エンデンィングで流れる『ドロップ』を収録した『CASANOVA SNAKE』。

青い春 [DVD]

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