suck in the 80’sその2

gakus2005-10-04

 NEW ORDERの2枚組DVD『ベスト&ストーリー』が到着。さっそく2枚目の方のドキュメンタリー「ニュー・オーダー・ストーリー」を観る。

 これはアルバム『REPUBLIC』を発表したころ(1993年)に作られたTV用ドキュメンタリーで、ジョイ・ディヴィジョン以降、イアン・カーティスの死を乗り越えてニュー・オーダーが成功するまでをたどったもの。10年ぐらい前にVHSでリリースされ、当時一度見たままそれをなくしてしまい、ずっと見直したいと思っていた。

 ジョイ・ディヴィジョンよりも成功する、という意思がメンバーにあったことは意外といえば意外。そもそもイアン・カーティスというカリスマを失った彼らに、当時はバンドとしての存在感は希薄だった。ニュー・オーダーがビジュアル戦略的にバンドのメンバーを表舞台にあえて出さなかったせいもあるだろうけれど、当時はジョイ・ディヴィジョンの影を引きずる“暗い"バンドという印象が強かった。来日公演での徹底して愛想のないパフォーマンスは、やる気があるのかないのかよくわからなかったしなあ。そんな部分が、ある種クール見えるのが、また魅力だったが…。

 そんなニュー・オーダーも『WORLD IN MOTION』を発表した1990年あたりから事情は変わってくる。ご存知のとおり、『WORLD〜』はサッカー(確かワールドカップイングランド・チームのための)の応援歌。これには当時、相当な違和感を覚えたものだ。無機質なデジタルビートで応援されても士気は上がらんだろうに…が、これがイギリス人には受け入れられ、気づけばニュー・オーダーは英国の国民的なグループに成長していた。しかし、「ニュー・オーダー・ストーリー」の最後の方でバーナードはこう語る。“望んでいなかったが、僕らはポップ・バンドになってしまった"と。“成功するバンド”と“ポップ・バンド”は、彼の中ではイコールではなかった。

 結局、90年代には一枚のオリジナル・アルバムを発表したのみ。このドキュメンタリー以後は、なかば解散同然となったのは、このポップ・バンドへの予期せぬ転換が大きく影を落としていたのは容易に想像できる。メンバーのソロ活動を経て、21世紀になってようやく復活したとき、ニュー・オーダーはポップ・バンドとしての歩むことを完全に受け入れていた。現在のライブ映像をみると、1980年代のライブとは明らかに違っている。『LOVE WILL TEAR US APART』を演奏しながら“カモーン!"と言ってオーディエンスをあおるようなバンドになるとは、当時は想像もできなかった。

 もちろん、長い開店休業時代を挟んだとはいえ四半世紀もバンドが存続したのだから、凄いことではある。余談だが、「ニュー・オーダー・ストーリー」の中でU2のボノがインタビューで、“イアン・カーティスが存在するなら俺たちはいつまでもナンバー2だ。でもがんばるしかなかった”と語るが、この言葉どおり、その後本当にがんばってワールドワイドの成功を収めてしまう。そして、このドキュメンタリーの最後の方で“ニュー・オーダーのようなキャリアを真似できるだろうか。いや、俺たちはもっとうまくやる”と言って、本当に解散状態に陥ることなくキャリアを続けてしまっている。有言実行の人だなあ、と改めて思った次第。

 ジャケはニュー・オーダーのキャリアの分岐点となった『WORLD IN MOTION』のシングル盤。この曲はマイケル・ウィンターボトム監督の映画「バタフライ・キス」では、非常に重要にアイテムとなっていた。

ベスト&ストーリー [DVD]

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