もうひとつのモータウン・レジェンド

gakus2006-02-11

2月6日の日記マーヴィン・ゲイの伝記映画について記しましたが、同じモータウン系アーティストを題材にした製作中の作品に「DREAMGIRLS」がある。といっても厳密には同名ミュージカルの映画化ですが、このモデルになったのがシュプリームス/SUPREMES。1960年代に一世を風靡した、ご存知ダイアナ・ロスとメリー・ウィルソン、フローレンス・バラードの3人組。

 ミュージカル版の『ドリームガールズ』は観ていないので、はっきりしたことは言えないが、ネルソン・ジョージ著『モータウン・ミュージック』によると、メリー・ウィルソンはこのミュージカルを観て“これが本当のシュプリームス・ストーリー"と言ったという。本当の、というのは脱退した後、モータウンとの関係を一切遮断されたフローレンス・バラードを悲劇のヒロインとして、そしてダイアナ・ロスを“スターになりたいと思った時だけ気骨を示した、ただの操り人形"(『モータウン・ミュージック』より)として描いていること。当然、ダイアナ・ロスはミュージカル『ドリームガールズ』を観に行こうとしなかったという。彼女を“操った”モータウン社長ベリー・ゴーディJr.は自伝『モータウン/わが愛』によれば、ダイアナ・ロスとは長年、愛人関係にあったとか。

 シュプリームス脱退後のフローレンス・バラードがたどった後の人生は悲惨そのもので、ソロ活動に転向するも契約の関係で“元シュプリームス"を謳うことを許されず、レコードは売れず。貯金は悪徳弁護士に食い尽くされ、晩年は公団住宅で過ごし、失意のうちに1976年に心不全で世を去った。さすがにミュージカル『ドリームガールズ』はここまで悲惨ではなく、フローレンスにあたる人物は、かつての盟友である女性たちと感動的に再会してフィナーレとなるらしい。

 で、映画版はどうなるのか。ダイアナ・ロスにあたるキャラクターにふんするのが、なんとビヨンセ。そしてベリー・ゴーディJr.に相当するキャラクターにジェイミー・フォックス。この2人が一応、主役扱いとなる。で、肝心のフローレンスにあたるキャラを演じるのが、ブロードウェイ出身の舞台女優ジェニファー・ハドソン。このキャスティングから見ると、ダイアナとベリーを、あまり悪い風には描けないんじゃないのか…という気がしてくる。美談にされすぎるのもどうかと思うが、その辺のサジ加減は如何に?

 ちなみに監督は「愛についてのキンゼイ・レポート」のビル・コンドン。他にエディ・マーフィも出ています。

 ジャケは1967年に発表された『THE SUPREMES SING RODGERS & HART』。フローレンス在籍時の最後のアルバム。