バック・トゥ・涙の70’S

gakus2006-05-04

 ヘヴィーロック・アーティスト、ロブ・ゾンビが「マーダー・ライド・ショー」に続いて監督を務めた「THE DEVIL’S REJECT」を輸入DVDで観る。

 お話は「マーダー・ライド・ショー」の殺人鬼一家のその後を描いたもの。一家に兄を殺された保安官の執拗な追跡。モーテルで宿泊客を虐殺し、車を強奪するなど暴走する一家の逃避行。続編とはいえ前作のオフビートなコミカル・テイストはおろかホラー色まで払拭し、骨のあるバイオレンスドラマとなった。「俺たちに明日はない」などのアメリカンニューシネマが、レビューで引き合いに出されるのも納得のアウトロー映画。

 もちろん無法の殺人鬼一家だから常識的に共感なんぞできるものではないが、それがなぜかできてしまうのがこの映画のマジカルなところ。とりわけ音楽面での演出が効果は絶大だ。その最たる例がクライマックスで、サザンロックの雄レーナード・スキナード/LYNYRD SKYNYRDの『FREE BIRD』がスローモーションの映像とマッチして神々しく響き、同情の余地のない殺人鬼たちも実は何かのメタファーなんじゃないかと思わせる。また、1960〜70年代に活躍したシンガーソングライター、テリー・リード/TERRY REIDのナンバーも効果的に使われており、クライマックス直前の不穏な展開にかぶさる『TO BE TREATED RIGHT』の切ないこと。さらに『FREE BIRD』が鳴り終わった後、まさしく鳥のように飛翔するカメラからの映像に重なってエンドクレジットとなるのだが、そこでフィーチャーされるのもリードのナンバー『SEED OF MEMORY』で、これがまた哀愁を誘う。

 この他、オープニングのTHE ALLMAN BROTHES BAND、THEREE DOG NIGHT、STEELY DANなど1970年代の土臭いアメリカンロックがギッシリ。それだけで十分にアメリカンニューシネマ風。毛色の異なるところでは、ブルースの名手OTIS RUSHの古い映像がモーテルのTVで流れるが、それに重なるように殺人鬼一家の長男(役名=オーティス)が、まさしく暴走するシークエンスがある。

 1970年代的要素はキャスティングにも表われ、「ゾンビ」のケン・フォーリー、「サランドラ」のマイケル・ベリーマンの出演がホラー・ファンには嬉しいところ。「ダーティファイター」をはじめ当時のイーストウッド作品に多数出演していたジェフリー・ルイスが一家の犠牲となるカントリーバンドのリーダー、「ウォリアーズ」のヒロイン、「ストリート・オブ・ファイヤー」のマイケル・パレの姉役などウォルター・ヒル作品で活躍したデボラ・ヴァン・バルケンバーグが娼婦役で出演していのも個人的には燃えどころでした。

 ジャケはテリー・リード、1976年リリースのアルバム『SEED OF MEMORY』。タイトル・ナンバーはもちろん『TO BE TREATED RIGHT』も収録。