ソウル・ファン、イーサン・ハント

gakus2006-05-11

 現在全米で大ヒット中、日本でもサマー・ムービーの本命と目されている「ミッション:インポッシブル」シリーズの最新作「M:i:Ⅲ」。前2作は映像スタイル先行型の監督らしい作りで、それはそれで面白かったが、今回はTV「エイリアス」「LOST」のJ.J.エイブラムスの起用でドラマ面を強化。トム・クルーズふんする主人公イーサン・ハントの超人的な側面は抑えられ、人間的な部分が強調されている。イーサンが泣いたり、怒ったり、落ち込んだりと、感情的な部分の振り幅も大きい。とはいえアクションの迫力は抑えられたどころか、逆に凄みを増した。シリーズでもっともドラマチックな作りといえるのではないだろうか。

 今回のイーサンは人並みに結婚生活に向かって歩いているという設定だが、スパイの仕事を婚約者に打ち明けられずにいる。いわば仕事とプライベートの狭間に立たされており、フィリップ・シーモア・ホフマンふんする敵はそこを突いてくる。さらに所属組織IMFに単独行動の失敗を責められ拘束されることもあり、イーサンの前には例によって危機が山積み。

 で、毎回話題になるエンディングテーマだが、かねてから噂されていたとおり、カニエ・ウエストの手によるもので、アフリカン・ビートをとりいれたダンサブルなナンバーとなっている。女性コーラスのメロディアスでソフトな感触はクインシー・ジョーンズに似たものも感じさせるが、その辺は単調なヒップホップとは異なり、コンポーザー兼プロデューサーとしての才覚も見てとれる一曲。

 他には冒頭、婚約パーティーのシーンで、スティービー・ワンダーやエモーションズなど、1970年代のファンキー・ソウルが矢継ぎ早にフィーチャーされている。個人的に笑ったのはIMFを敵に回して組織の建物内をイーサンが逃げ回るシーン。彼は強奪した無線機をラジカセの前に置いて逃げ、そこで流れてる曲が追っ手にも聴こえるのだが、“We Are Family〜”というフレーズが皮肉っぽく響く。

 ジャケはその『WE ARE FAMILY』を収録したSISTER SLEDGE、1979年の同名アルバム。PAUL WELLERがこのアルバムから『THINKING OF YOU』をカバーしたことで、個人的には評価が上がった。