UKロック攻勢

gakus2006-10-27

 「ハリー・ポッターとアズガバンの囚人」のアルフォンソ・キュアロン監督による「トゥモロー・ワールド」(11月公開)は、P.D.ジェイムズの小説『人類の子供たち』を映像化したSFドラマ。荒廃に向かう近未来を舞台にした、なかなかの力作であります。

 舞台は人類に子供が生まれなくなってから10数年を経た世界。辛うじて政府機能を保っているイギリス、ロンドンの国家公務員(クライブ・オーウェン)が、反政府団体のリーダーとなっている別れた妻に頼まれ、国境を越えるための通行証を手に入れた。これによって彼は反政府活動に巻き込まれるのだが、一方で信じられない事実を目にし、それに未来への希望を託そうと決意し、行動を起こす…。以前、記したジョン・レノンの『BRING ON THE LUCIE』がエンディングで流れるのは、この映画です。

 この映画にはロック・ネタが結構多くて、会話の中にも“レノン=マッカートニー”という言葉が出てきたりする。この言葉を発するのは、クライブ・オーウェンを助ける年上の友人で、かつては革命家だった老人(マイケル・ケイン好演)。老ヒッピーというべき、このじちゃんはマリファナを吸いながら車の中でディープ・パープルの『HUSH』を聴いていて、家で愛聴しているのは『RUBY TUESDAY』(ストーンズの演奏ではなく、オペラ風のコーラスが入るカバー・バージョン)。クライブを助けたあとに、この曲をかける後の展開が泣ける。

 一方、クライブが許可証をもらいにいく官僚の家は、荒廃した外の世界とは対照的でモダンでオシャレな高層ビルの一室。なぜか、ここはプログレ・ムードで、クライブが部屋に足を踏み入れるとキング・クリムゾンの『THE COURT OF THE CRIMSON KING』が聞こえてくる。さらに窓の外から見える風景は、宙を舞うピンクのブタ。もちろん、これはピンク・フロイドのアルバム『ANIMALS』のジャケットのパロディ。

 他にもTHE KILLSの曲が“懐かしい歌”としてラジオで紹介されていたり、RADIOHEADのナンバーも聞こえてきたりと、新旧UKロックがズラリと並ぶ。エンドクレジットではレノンに曲に続いて、さらに元PULP、JARVIS COCKERの『RUNNING THE WORLD』が。ジャーヴィスは「ハリー・ポッター」への出演、楽曲提供でキュアロンとつながりがあり、なるほどといったところだが、ソロ・ナンバーを作っていたとは知らなかった。

 それどころかジャーヴィス、来月にはソロ・アルバムもリリースするんだと。ジャケは、そのアルバム『JARVIS』。なお、『RUNNING THE WORLD』は下記MySpaceで視聴できます。
http://www.myspace.com/jarvspace