帰ってきた! その2

gakus2009-01-22

 俺たちのガイ・リッチーが帰ってきた!と思わずにいられない『ロックンローラ』(2月公開)。高給取りの奥方との蜜月の間、迷走し過ぎの映画ばかり撮っていたが、離婚効果か完全復活。『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』以来のロンドン、ダウタンウン犯罪群像劇が戻ってきた。

 裏社会の実力者が不動産の利権を左右するロンドン、マフィアの大物(トム・ウィルキンソン)や、彼に借金のある小悪党(ジェラルド・バトラー)、チンピラたち、英国進出を図るロシアの実業家や、その女性弁護士、ヤク中のロックスターらが入り乱れ、土地の売買計画は意外な方向へ向かう……。現代ロンドンの地上げ事情を反映させつつ、ダウンタウンのいかがわしさを充満させた快作。生き生きとしたセリフやテンポの良さに、憑きものが落ちたかのようなガイ・リッチーのフットワークの軽さを感じさせる。物語の鍵を握るヤク中のロックスターはBABYSHAMBLESピート・ドハーティ(もうすぐソロアルバムを出すとか)をモデルにしているらしい。

 音楽面もガイ・リッチー復活を象徴しており、ファンキーなスコアは『ロック、ストック〜』『スナッチ』を確実に連想させる。既成曲のセレクトもエッジが効いており、CLASH"BANKROBBER"(件のヤク中ロッカーがやくざな父親を回想するシーンでフィーチャー)のようなクラシックなナンバーからHIVESに代表される最近のバンドまで多彩なセレクト。リッチーの前作『リボルバー』では予告編のみで使われていた22-20'sの"SUCH A FOOL"を、ジェラルド・バトラーがギャングに襲撃されるシーンで使われていて、思わずニヤリ。本作の予告編でフィチャーされているSUBWAYS"ROCK'N'ROLL QUEEN"は、本篇でもしっかりフィーチャーされているばかりか、SUBWAYSがライブシーンで出演して、この曲をしっかり奏でている。

 この映画ガレージパンク風のナンバーが印象的な使われ方をしており、バトラーが会計士の振りをして現金強奪に出発するシーンでは60'sシーンの雄SONICS"HAVE LOVE, WILL TRAVEL"が流れ、彼がギャングに追われるシーンでは80'sのSIENTISTS"WE HAD LOVE"を延々とフィーチャー。騒動のヤバさを際立たせている点で、これらの曲の起用は効果的過ぎるほどであります。

 ジャケはSCENTISTS、1983年リリースの編集盤『BLOOD RED RIVER 1982-1984』。このバンドも、そろそろ再評価されていい時期だ。