若ハゲの至り

gakus2009-03-09

 昨秋公開された『BOY A』は久々に『さらば青春の光』にも通じるノー・リターン青春映画だったが、今週末公開される『THIS IS ENGLAND』も、ある地点を超えると後戻りできなくる思春期の現実に、切なさを込めた傑作。『家族のかたち』のシェーン・メドウズ、久々の日本公開作であります。

 舞台は1980年代、フォークランド紛争の真っただ中、サッチャー政権下のイギリス。背伸びしたくてしょうがないローティーンの少年ショーンが、イジメから守ってもらったことをきっかけに、スキンヘッズの年長者たちのグループの一員に。父をフォークランドで亡くしている彼は、このグループに家族的な居心地の良さを見出すのだが、グループの先輩的な存在であり、ナショナル・フロント(イギリスの過激右翼政治団体)に傾倒している男と出会ったことから、”この国をイギリス人の手に取り戻せ!”とばかりに人種差別的な考えに取りつかれてゆく…。

 80年代のスキンヘッズが愛した音楽はモッズにも通じるブラック・ミュージックを通過したロック。主にスカなのだが、彼らがダベッている部屋ではTHE SPECIALS”DO THE DOG"が聴こえてきてニヤリ。しかし、皮肉にも主人公はやがてアジア人だけでなくブラックな人々にも複雑な感情を抱くようになる。主人公がナショナル・フロントに連れられていくシーンでかかるのはUK SUBSの激パンク・チューン”WARHEAD"。そして一連の事件を経た主人公のラストの姿にCLAYHILL"PLEASE PLEASE PLEASE LET ME GET WHAT I WANT"(もちろん、THE SMTIHSのカバー)が重なり、泣かす!ちなみにCLAYHILLは、メドウズ監督の出世作『トゥエンティフォーセブン』に楽曲を提供していたSUNHOUSEのメンバーが作ったバンド。

 ジャケは1979年リリース、スペシャルズの記念すべきファーストアルバム。今聴いても血がたぎるぞ。