サミュエルが怖い!

gakus2009-08-09

 全米でスマッシュヒットを記録しながらも、日本ではDVDスルーとなったスリラー『レイクビュー・テラス 危険な隣人』。ここまでクオリティの高い作品が劇場公開されないのだから、日本における洋画の不振は深刻と言えよう。

 サミュエル・L・ジャクソンが人種偏見の強い警官を演じる本作。保守的な考えを持つ彼には人種を超えた結婚など、もっての他で、隣に引っ越してきた白人(パトリック・ウィルソン)と黒人の夫婦にネチネチと嫌がらせを繰り広げ、それは殺人へと発展してしまう…。『ベティ・サイズモア』やリメイク版『ウィッカーマン』で人間の根底に潜む悪意を容赦なく描いてきたニール・ラビュートの底意地の悪い演出が冴えわたり、あっぱれなほど腰の落ち着かないスリラーに仕上がっている。

 パトリック・ウィルソンふんする白人男は、幸福だが息詰まりをも感じている新婚生活を紛らわそうと、愛車の中でヒップホップを大音量で聴いているのだが、それがサミュエルには気に入らない。”ヒップホップを聴いても、おまえは黒人にはなれない”と明言するのだから、何とも感じが悪い。

 見過ごされやすいと思うが、こんなサミュエルの音楽的な人種偏見は、冒頭ですでに提示されている。そこでサミュエルは食卓にiPodを持ちこんだ愛娘を叱るのだが、彼女が聴いているのはイギリスのインディーズ・バンド、BOY KILL BOY(もちろん白人のバンド)の"KILLER"というナンバー。白人の音楽を聴いているだけで胸クソ悪いのに、それが”人殺し”という曲なもんだから、保守的なサミュエルは、さらにイライラを募らせるのである。

 ジャケは、このナンバーを収録した2006年リリース、ボーイ・キル・ボーイのデビュー・アルバム『CIVILIAN』。