とっても身近な記憶喪失

gakus2010-05-20

 今さらという気がしないでもないが、DVDスルーからウルトラCで劇場公開を果たしてしまうコメディー『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(7月公開)につていては触れておきたい。

 結婚を目前にした友人に独身最後のバカ騒ぎを堪能させようと、ラスベガスに向かったその友人3人。ガンガン飲んでハメを外した彼らだったが、翌朝目覚めると前夜の記憶がない。しかも肝心の花婿の姿も見当たらない。あるのは二日酔いの頭痛だけ。そしてなぜか宿泊先のホテルには赤ん坊と虎がいる。いったい前夜に何が起こったのか?

 記憶喪失映画はだいたいシリアスなものが多く『ボーン・アイデンティティー』や『メメント』などがその代表例に挙げられる。実際、これらの作品の主人公にとって記憶喪失は深刻な問題だが、『ハングオーバー!』の記憶喪失は単にアルコール(と誤って服用したドラッグ)によるもの。とてつもないバカだが、酒で記憶をなくすことほど一般の観客にとって身近なものはない。この映画は諜報員でも特殊なスキルを持つ者でもない”俺たちサイズ”の記憶喪失ムービーなのだ。

 選曲に関してはノーテンキな大陸的ロックンロールが多かったなあ、という印象。サザンロックに関してはさほど詳しくないので、どれがとの曲かは判別しきれない曲が多かったが、冒頭のEL VEZ(エルビスの街が舞台だからの起用?)や、ポーカーのシーンで鳴るWOLFMOTHERあたりもやたらと陽気だ。

 しかし、選曲面でいちばん笑ったのは記憶をたどるうちに金に困る事態に陥った3人がブラックジャック必勝法の本を見つけ、カジノでトライするシーンで流れるTHE BELLE STARSの”IKO IKO”。映画ファンならばピンとくると思うが、これは同曲が使われていたアカデミー賞受賞作『レインマン』のパロディ。あの映画でのダスティン・ホフマンふんする自閉症男は数字面でとてつもない才能を発揮したが、『ハングオーバー!』の登場人物はカンニング的に勝ち運を身に付けるのだ。等身大のバカ者たちだ、ここは応援せざるをえないじゃないか!

 ジャケはTHE BELLE STARS"IKO IKO"のUK盤7インチ・シングル、1983年リリース。

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

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