ソウルに殉じる

gakus2010-05-18

 昨年翻訳が発刊されたエリック・ガルシアの小説「レポメン」を原作とする近未来SFドラマ『レポゼッション・メン』(7月公開)の話。

 政府機能がマヒして大企業が権力を掌握する未来。ユニオン社提供の人工臓器の普及により、人間は永遠の命を得ることに近づきつつある。しかしこの臓器は高額で、ローンが支払えなくなると強制的に回収が行なわれる。”レポゼッション・メン(レポ・メン)”とは、この取り立てのプロフェッショナルのこと。抵抗する債務者を発見し、抵抗をかわし、メスを振るって瞬時に回収。もちろん臓器を回収された債務者は大方の場合、命を落とすことになる。さて、ジュード・ロウふんする主人公は、かつてはユニオン社の敏腕レポ・マンだったが、今や人工心臓のローンの支払いが滞り、逆に追われる身。元同僚で今やエース級のレポ・メンである親友(フォレスト・ウィテカー)も、プロに徹して追ってくる。果たして主人公は生き残れるのか?

 物語は、なぜ主人公がこんな目に遭ったのか、そしてこの先どうなるのかを交錯させながら進行。スリリングであるのはもちろんのこと、主人公のナレーションが醸し出すハードボイルドな雰囲気や、風刺的なユーモアが効いていて、個人的には見応えがあった。好きな人なら徹底的にハマる、カルト的な魅力あり。

 本作にはヒップホップ・アーティスト兼俳優のRZAも出演しており、ジュードに臓器を回収されることになるヤク中のミュージシャンを演じているのだが、このキャラがなかなかイカす。レポ・メンに追われる債務者は大抵、抵抗するが、彼は落ち着いていて”この曲を完成させるまで待ってくれ”という。彼が作っている曲として、このシーンで流れるのがウィリアム・ベルのソウル・スタンダード”EVERYDAY WILL BE LIKE A HOLIDAY"。命を落とすこと、すなわち毎日が休日になる……そんんな運命を受け入れる姿に、ブルージーなスタックス・サウンドが重なる。かっちょえー!

 この曲以外にもニナ・シモンの”FEELING GOOD"をはじめブルース、レゲエのオールド・ファッション的選曲がなされており、いかにも未来的なエレクロトニック・チューン以上に強い印象をあたえる。本作に漂うハードボイルドな空気は、そんな選曲の効果もある。

 ジャケはWILLIAM BELL、現在も入手が容易なSTAXのベスト盤『THE VERY BEST OF WILLIAM BELL』。