ナタポー祭
『ブラック・スワン』が日本でも大ヒット中で、夏には前回のエントリーで取り上げた『マイティ・ソー』も控えるナタリー・ポートマン。アカデミー賞受賞効果か、他にも今夏は彼女の出演作が2本、日本公開される。
ひとつは6月公開の『メタルヘッド』。母と死別した少年が主人公で、悲しみを引きずるこの男の子は、やはり傷の癒えない父(レイン・ウィルソン)や、祖母(パイパー・ローリー!)と暮らしている。そんな一家のもとに、ひょんなことから宿なしのヘビメタ男(ジョセフ・ゴードン=レヴィット!!)が転がり込んできた。子どもの前でも平気でワイ談を繰り広げ、すぐに暴力に訴えるケダモノのような男だが、彼の言うことには実は真実もチラホラと見え隠れし、この一家に思いがけぬ影響をあたえてゆく…。
ヘビーといえばヘビーだが、そこはジョセフ・ゴードン=レヴィットがキーパーソンなのだからユーモラスな作り。ツラい時期を乗り越えるために必要な精神を、押しつけがましさのない自然さで描いており、好感度はかなり高い。おっと、忘れることろだったけれど、ナタリーは少年が憧れるスーパーのレジ係の女性を演じています。脇役だけれど印象深いのは、映画の後半で少年に”デブのヤリマンなんて死んでしまえ!”と言われてしまうからかもしれないけれど、どんな展開で言われるのかは、ここではあえて伏せます。
この映画でジョセフが演じるキャラクターはメタリカの事故死した元メンバーをヒントにしているらしく、メタリカのメンバーもこの映画のスピリットに精神に共感し、快く楽曲提供に応じたという。自分はよくわからなかったが、4曲ほど使われております。
もう一本の今夏のナタリー主演作は、7月に公開される『水曜日のエミリア』。こっちは主演で、製作総指揮にも名を連ねている。お話の肝となるのは、妻子ある夫と恋に落ちて結婚したため”略奪女”のレッテルを貼られた上に、夫の実子にはなじんでもらえず、さらに産んだばかりのベビーと生後3日目に死別してしまったヒロインの、ドン詰まりの日常からの脱却。
女優がプロデーサーを兼ねると往々にして男性目線が希薄になりがちだが、本作も例に漏れず。ゆえに『メタルヘッド』ほど入れ込めなかったが、女性目線が強調されているぶん、同性の共感は引くのではないだろうか。
音楽も割とナイーブな選曲で、アデル、フレイミング・リップスが使われているようだが、ファンでない自分には判別できず。唯一、反応できたのはナタリーが後に夫となる上司と初めてキスをして、愛を深める回想シーンで流れるベル&セバスチャン"WAITING FOR THE MOON TO RISE”。”私はこれまで一度も踏みしめたことのない道をたどっている”というのは、この後の闇を象徴してるようで興味深い。でも、結局は誰もが闇の中を歩いていかねばならないんだよね。
ジャケはこのナンバーを収めたBELLE & SEBASTIAN『FOLD YOUR HANDS CHILD, YOU WALK LIKE A PEASANT』(邦題『わたしのなかの悪魔』)、2000年リリース。
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