タイムレス・ロンドン

gakus2011-10-07

 本日もカサビアン絡みの新作の話。12月に公開される『ロンドン・ブルバード』はコリン・ファレル、キーラ・ナイトレー共演のイギリス製クライム・ストーリーで、カサビアンのギタリストでソングライター、サージ・ピッツォーノがスコアを担当している。

 3年の刑期を終えて出所したミッチェル(ファレル)は、悪友の借金取りの仕事を手伝いつつ、突然引退した人気女優シャーロット(ナイトレー)のボディガードの仕事を引き受ける。一方で、友人のホームレスを撲殺した団地のガキ共を探し回ったり、身持ちの悪い妹に手を焼いたり。そんなある日、悪友の雇い主であるマフィアの顔役ギャント(レイ・ウィンストン)に気に入られたミッチェルは、手下になるよう圧力をかけられるが、これを頑として拒絶。しかし、ギャントはミッチェルの生活のあらゆる部分に根を張っていた。シャーロットとの関係に慰めを見出しつつも、身動きできなくなってゆくミッチェルは、ギャントとの関係に決着を付けねばならなくなる。

 サージのスコアは基本的にバンド・サウンド、プラス、ストリングスで、KASABIANカサビアンのバックトラックのような感じ。カサビアンの楽曲も使用されていて、"CLUB FOOT"がパブで流れてくる。また、クライマックスでは"THE GREEN FAIRY"なる新曲が延々と使用されていて、ビートルズの"A DAY IN THE LIFE"のようなサウンドがドラマチックなムードを盛り立てる。

 しかし音楽上の主役はカサビアンではなく、むしろヤードバーズ。"HEART FULL OF SOUL"が冒頭と劇中、エンディングと3度も使用されるが、なんでも監督のウィリアム・モナハンは映画を撮ろうと決めた10代の頃から、この曲をオープニングに使おうと思っていたんだとか。また、主人公の妹が愛人とSM的な性行為に及ぼうとする際に部屋で流れているのが、やはりヤードバーズの"TRAIN KEPT A ROLLIN'"。この他、主人公の出所パーティではTHE ROLLING STONES"STRAY CAT BLUES"、彼がヒロインの家を最初に訪ねてゆくシーンではPRETTY THINGS"COME SEE ME"(プリティ・シングスの覆面バンド、ELCTRIC BANANAの曲もかかる)、キーラの部屋ではレコード・プレーヤーからBOB DYLAN"SUBTERRANEN HOMESICK BLUES"が聴こえてくる。

 これだけ昔のブルースロックが鳴っていると、舞台が60年代末のロンドンと思えてくるが、これはれっきとした現代劇。ただし、PCやスマフォなんかは出てこないし、ケータイが一瞬使われるだけ。作り手の側もタイムレスな雰囲気を狙っていたのだろう。

 ジャケは、THE YARDBIRDS『HAVING A RAVE UP』、19665年リリースのコンピレーション。前ものっけたな、コレはたぶん。

↓こっちはKASABIAN"THE GREEN FAIRY"。

負けても負けねえ!

gakus2011-10-06

 昨日に続いてカサビアンのナンバーがエンドクレジットで流れる映画。今日は11月公開のクライム・サスペンス『テイカーズ』のお話。

 年に一度、念入りに計画を練って銀行を襲撃しては大金を奪い、優雅な生活を楽しむ、ロサンゼルスの5人組の強盗団。久々の強盗計画をまんまと成功させた矢先、服役していたかつての仲間がデカい仕事の話を持ちかけてくる。この男の言うことは、どうも信用できない…と思いつつも、5人組は昔のよしみで年に一度のペースを破り、計画を実行するのだが、そこには大きな落とし穴が…。

 強盗団にふんするのは『ワイルド・スピードMEGA MAX』も好評のポール・ウォーカーや、ヘイデン・クリステンセンイドリス・エルバといった面々。ミュージシャンではその一員にクリス・ブラウン、物語を動かす昔の仲間にラッパーのT.I.がふんしており、彼らのファンには見どころとなるはず。『アーマード/武装地帯』では強盗一味のリーダーだったマット・ディロンが、ここでは5人組を追う刑事にふんしていて、イイ味を出している。

 以下、ネタバレあり。

 予想通り、想定外の強盗計画は破綻するのだが、かといって5人は皆が皆、敗北するわけではなく、その辺は各々の解釈にお任せします…というような結末。窮地に追い込まれたときに、どう振る舞うかを問われるわけだが、これってある意味ハードボイルドだね。

 で、最後に流れるのがカサビアンの"UNDERDOG"。「俺は負け犬だが、これが俺の人生、このまま走り続けてやる」(大意)というフレーズは、強盗連中の生きざま、そのままのようで、これまた味がある。負けるヤツにも意地があるんだよ。

 ジャケは、この曲で幕を開けるKASABIANの前作『WEST RYDER PAUPER LUNATIC ASYLUM』、2009年リリース。”UNDERDOG”は、なにげに配信ではシングルカットされていて、その時にカップリングされていたのが昨日のエントリーで取り上げた”蛾人間”の曲だった。

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恐怖、蛾男!

gakus2011-10-05

 カサビアンの新譜が出たからというワケではないだろうけれど、映画の中でも最近彼らの曲を、ちょくちょく耳にする。たとえば、今月公開されるジェイソソン・ステイサム主演の刑事アクション『ブリッツ』。

 ロンドンで警官を狙った連続殺人事件が発生。叩き上げの刑事(ステイサム)が、本庁から派遣されたエリートだがゲイゆえに白眼視されている新任の相棒(パディ・コンシダイン)とともに犯人を追う。この犯人の正体は劇中で早々に明かされ、さらに続くその犯行が並行して描かれる。この犯人、パーカとジャージ姿でチャリンコをこぎながら街を駆けるチンピラ風情だが見かけによらず切れ者で、大胆にもメディアに犯行を予告し、次々と警官を血祭りに上げる。一方のステイサムとコンシダイン、ラッドなタフガイと同性愛者では一見釣り合わないが、職務へのひたむきさに共鳴し、次第に信頼を築き上げていく。

 今回のステイサムは、ともすればスコットランドヤード版ダーティ・ハリーとも思われるほどの乱暴者で、冒頭いきなり車泥棒をボコりまくる。が、ハリー・キャラハンと異なるのは、警察機構へのニヒリズムとは無縁で、”刑事は俺の天職だ”と言い切るばかりか、上司に”クピにしたら何するかわからんぞ”と凄む。犯罪者も上層部をもビビらせる、恐ろしいまでに俺流の刑事。

 で、エンディングに流れるのがカサビアンの”JULIE AND THE MOTH MAN”。「囚人たちをかきわけて俺は進む〜サイコ野郎のラム酒のキス〜俺は蛾人間、服のままのお前を食らいたい」といった歌が流れてくるが、映画の文脈から判断すると、この暴力的な”蛾人間(MOTH MAN)”はステイサムふんする主人公と言って差し支えない。ちなみに”モス・マン”は1960年代に米ヴァージニア州に出没したとされる未確認生物で、現在では都市伝説的に語られている。リチャード・ギアが出ていた映画で、このUMAを題材にした映画がありましたね

 ジャケはKASABIANの新譜、『VELOCIRAPTOL!』。国内盤のボートラとして、この曲が収められている。

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日蔭で生きる

gakus2011-09-07

 今月公開となる『クラッシュ』のポール・ハギス監督、ラッセル・クロウ主演のサスペンス『スリーデイズ』は、なかなか見ごたえアリ。フランス映画『すべて彼女のために』(監督フレッド・カヴァイエ。同作もそうだし、彼の近作『愛のために撃て』もそうだが、エモーションとアクションのバランスが取れていて面白かった。どうでもいいけれどヨーロッパコープには、こういう職人が必要だと思うぞ)のリメイクで、基本的に忠実になぞりつつ、独特のアレンジを加えている。

 クロウふんする主人公は教師で、妻や幼い息子とつつましくも幸福に暮らしている。ところがある朝、妻がいわれのない殺人罪で逮捕された。すべての証拠は彼女が犯人であることを示しており、上訴しても勝ち目はない。そこでクロウは妻を脱獄させるため、綿密な計画を練る…。タイトルの“3日間”は、練りこんだ計画を実行に移すまでの時間を指す。

 以下、ネタバレを含みます。

 『すべて彼女のために』は、ある種の達成感を残して終わる映画だったが、こちらは『クラッシュ』や『告発のとき』のハギスだから、安易なハッピーエンドには流れない。いや、ハッピーエンドには違いないんだけれど、同時に不穏な空気がつきまとう。脱獄イコール犯罪であることを意識すると、必然的にそうなってしまうものではあるが。

 結末近くに流れるナンバー、ザ・ライク“DON'T MAKE A SOUND”も不安感を駆り立てるうえで効果を発揮。アンニュイな曲調はもちろん、「それが利口な方法かしら? 騒がないで、私が泣いたなら…」という歌詞が、決して明るくない一家の未来を物語るようで、妙に腰が落ち着かなくなる。ハギスさん、ある意味、意地悪だ。

それと、この映画の製作には”Highway 61 Films”というディラン・リスペクトな名前の会社がかかわっているのだが、これはもしやハギスのプロダクション?

 ジャケはTHE LIKE、2010年リリースのセカンドアルバム『RELEASE ME』。ファーストはオルタナとポップの中間を行く感じでイマイチ好みではなかったが、ジャケが示すとおり60'Sガレージに振り切ったこのアルバムは文句なしにストライク!


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準備はできた

gakus2011-09-04

 いろいろあって大学生並の夏休みをとってしまったけれど、ぼちぼちブログ復帰と行きましょう。夏に公開された映画で書いておきたいものはいくつかあったけれど、そりはまた折を見て。

 とりあえず、公開されてる作品で書いておかねばならないのは『つぐない』のジョー・ライト監督とシアーシャ・ローナンのコンビによるアクション『ハンナ』。子供の頃から父親に殺し屋としての訓練を受けるという『キック・アス』のニコラス・ケイジ的な父ちゃん、エリック・バナに育てられた少女ハンナ。父親は彼女を人里離れた雪原で育てたが、それは父と彼女がCIAの標的となっていたからで、殺し屋の訓練も逆襲の機が来たときのためのものだった。16歳となり、外の世界に興味津々のハンナは意を決して世界へ飛び出し、CIAとの戦いに臨む。

 以後、ハンナとCIAの北アフリカ〜ヨーロッパを駆ける攻防が続く。旅の途中、ハンナはワゴン車で旅をするイギリス人一家と知り合う。一家の両親はヒッピーにも似た自由思想の持ち主で、ミドルティーンの娘も幼い息子も放任している様子。

 面白いのは、この一家がカーオーディオに合わせ、DAVID BOWIE“KOOKS”を合唱してること。グラム前夜のデビッド・ボウイが、ヒッピー文化にはまっていたのは有名だが、そういう背景を知ると妙に納得。また、この曲は変人視されている親が、子どもに対して人生の希望を歌ってあげるものでもある。この一家の両親、ブレがなくて、なんだか立派に見えてくる。

 ご存知のとおり、本作はケミカル・ブラザーズがスコアを担当しているのだが、このフィーチャーもおもろしくて、戦闘シーンではガンガン鳴っているのに、そうでないシーンではまったく響かない。この辺の抑揚は巧い。

 ジャケは“KOOKS”収録、ボウイの1971年のアルバム『HUNKY DORY』。ちなみに“KOOKS”は、当時のボウイが、生まれたばかりの息子へのメッセージとして作ったナンバー。その息子ダンカン・ジョーンズは、『月に囚われた男』や来月公開の『ミッション:8ミニッツ』の監督として活躍中であります。

ハンナ [DVD]

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死ぬのは奴らだ

gakus2011-07-14

 70〜80年代の虐殺ホラーには負け犬の奮起的な側面があるが、そういう意味では、やっと、やっと日本公開される『ピラニア3D』(8月公開)は正しい傑作。ジョー・ダンテの『ピラニア』の正当な続編とも(『殺人魚フライングキラー』をノーカウントにした場合)、リメイクともとれる本作。もちろん、この2作とのドラマ的な繋がりはないので、見てなくてもノープロブレム。デビュー作『ハイテンション』以降、バスレのないアレクサンドル・アジャだから、期待は裏切らないぞ!

 湖畔の街の春休みはバカンスを楽しむ若者たちで大賑わいで、パーティ気分の彼らは水着で浮かれ騒いでいる。地元の高校生ジェイクも一緒になって騒ぎたいけれど、根がオタクっぽいうえに、保安官をしているシングルマザーが仕事に忙しいので幼い妹や弟の世話をしなければならない。しかし街にやってきたエロビデオ撮影隊が、地元に詳しい彼に案内役を押しつけてきたのを幸いとばかりに、ジェイクは母に内緒で撮影隊のクルーザーに乗って湖に出る。ところが、湖底には人食い魚の大群が…。

 リチャード・ドレイファスが『ジョーズ』のパロディのように最初の餌食になるのは軽い挨拶程度(ドレイファス以外に、『バック・トゥ・ザ・フャーチャー』のクリストファー・ロイドエリザベス・シューが出てきて、なんだか懐かしい)で、大殺戮が始まるや日焼けした兄ちゃんたちも、ビキニの姉ちゃんたちも次々と殺人魚の群れに食い尽くされ、湖畔はすぐに真っ赤に染まる。ちぎれる胴体、露出する白骨、水中で踊り食いされるチ○コ。パニックのあげく、ワイヤーで胴をぶった斬られたり、ボートのスクリューに髪を巻き込まれたり、ボートの衝突に顔面を砕かれたり(湖畔イベントのMC、演じるはイーライ・ロス!)といった二次災害も凄まじい。

 冒頭で”負け犬の奮起”と記したけれど、バカンスをエンジョイしセックスの匂いをプンプンさせているヤツが犠牲者とはなるのは、ホラー・ファンにはおなじみの展開。こういう局面で頑張るのは大抵、遊び人になれないルーザー風の童貞(or処女)で、ここでは当然、主人公ジェイクということになる。

 さて、このジェイク君、登場するや”DEATH TO THE PIXIES"のTシャツを着用している。”THE PIXIES”はもちろん、アメリカン・インディーズのカルト・ヒーローである、あのピクシーズ。しかし、祭で浮かれている勝ち組意識の強い地元の若者たちは、ジェイクをバカにしてこのTシャツにジュースをぶちまける。ジェイクの部屋にはルー・リードラモーンズニルヴァーナレディオヘッドなどのポスターが貼られていて、やっぱりね、と納得してしまう。

 で、劇中ではあいにく、この辺のアーティストの曲はまったく聴こえず、流れてくるのはジェイクのような(というか、自分のような?)人間が好んで聴かない類のエレクトロ・ミュージックばかり。これに合わせて、勝ち組の若者たちはバカ騒ぎしたあげく、殺人魚の餌食となるが、一方でジェイクは意外な根性を見せて頑張る。つまり音楽的な点から見ても、負け犬の奮起が見てとれる、というワケです。

 ジャケは1997年リリース、ピクシーズの編集盤『DEATH TO THE PIXIES』。タイトルに反して簡単には死なないPIXIES、去年までは”まだやってるの!?”と思えるほどツアーをしていたが、今年は音沙汰が途絶えて、チョイ寂しい。

 オマケ↓。こちらは大虐殺シーンの3分の2ぐらいが見られてしまう。そういえば、ジョー・ダンテ版『ピラニア』も浮き輪の下の尻が噛まれることが惨劇の始まりだったような気が。

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動き過ぎるカメラに囚われて

gakus2011-07-08

 というわけで『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』。マイケル・ベイ監督と製作総指揮スティーブン・スピルバーグのコンビが放つ人気シリーズの(一応の)完結編。

 1950〜70年代の米ソの宇宙計画の影には、ハイテク変型生命体トランスフォーマーの秘密が隠されていた!という大胆な設定が冒頭で提示され、いきなり口アングリ。これをズバッと出されると、もうこの後の展開は何でもアリで、シャイア・ラブーフふんするボンクラ主人公がミーガン・フォックスにフラれた直後に、またもモデル体型の女の子(名前忘れたけど、ジェイソン・ステイサムの彼女でビトクリアズ・シークレットのモデルだった人)と付き合っているという映画以外にありえない設定も、人間の中に悪のトランスフォーマー(=ディセプティコン)に通じているヤツがいたという展開も、”何でも許すよ!”という気になってくる。今回はシリーズ初の3Dだが、ただでさえカメラをブンブン振り回すマイケル・ベイだから、前の席で見ると3D酔いすること必至!

 このシリーズは今のロックが毎回ガンガンかかっていて、自分が反応できる曲は限られている。今回はエアロスミスの"SWEET EMOTION"だけが知っている曲でした…。ただし、冒頭タイトルが出た直後、マイケル・ベイ作品らしくヒロインの尻がドーンとアップになってサムのいるベッドへと向かう、エロいのかロマンチックなのかよくわからないシーンで、どこかで聴いたことのある曲が聴こえて来た。エンドクレジットに目を凝らすと、U2”NORTH STAR"という曲名が!こんなタイトルの曲、知らねえよと思い、オフィシャルサイトを見てみたら新曲じゃん!まあ、ラブラブのシーンでかかるのだから甘ったるい曲には違いなく、好みではないが、それでもBONOのボーカルには条件反射的に反応してしまう。

 この曲がサントラに入ってるのかどうかは知らんけど、オタク的U2ファンとしては音源ゲットしないといけないでしょう(笑)。しかし、最近はCDで出るとも限らんし、面倒クセえなあ…。

 画像はU2昨年リリースのDVD『360°At The Rose Bowl 』。そういえば、これもゲロ吐きそうになる箇所があった。もっとサンハン器官を鍛えないとイカンなあ…。

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