「犬と歩けば」とドノヴァン
現在上映中の日本映画「犬と歩けば/チロリとタムラ」について。
動物介在療法なるシステムの下で、患者の心のケアにあたるために訓練された、セラピー・ドッグなるワンちゃんがいるという。そのトレーナーとなったダメ青年と、彼の元から去った恋人、その家族の絆の再生を描いた物語。監督の篠崎誠さんは、以前ライターをしていらしたこともあり、同じ雑誌で仕事をご一緒させていただいた関係で何度かお会いしたことがある。とても人当たりの良い方で、人付き合いのよくない自分にも気持ちよく接してくれた。そんな篠崎さんの人柄が、ジンワリとにじみ出たかのような映画。人と人が関わることの意味を優しく語りかけてくる、とても良い作品です。
気になったのは音楽ではなくて小道具。青年の恋人には引きこもりの妹がいて、その部屋にはアナログのレコードジャケットが飾られている。イギリスのフォークロックの大物、ドノヴァン/DONOVANが1960年代に発表した『A GIFT FROM A FLOWER GARDEN』と『HURDY GURDY MAN』の2枚(この他にドアーズのファーストも発見)。内省的な女の子が聴きそうな音楽と言い切るのは、いささか乱暴か。後者には名曲『JENNIFER JUNIPER』を収録しているが、これは丘に住む、自分に欠けたものを欲しがっている女の子に対して“何をしているの?”と問う曲だ。劇中では鳴らないけれど、観ているあいだ、脳裏にはこの曲が渦をまいていた。ときに人間は“何してんの?”という、ごく簡単なコミュニケーションの突破口さえ見出せないこともある。
1960年代のアーティストは、あらかた発掘され、再評価され尽くした感があるが、どういうわけかドノヴァンには、その機会があたえられない。ハッピー・マンデーズがカバーしたころ(もう10年以上前ですね)、一瞬、盛り上がったりしたけれど、長続きはしなかった。今ならベルセバのファンあたりに、スナンリ受け入れられそうな気がする。
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