私の好きなイギリス映画 5

gakus2004-09-13

 「時計じかけのオレンジ」からさかのぼること3年前の1968年、マルコム・マクドウェル、“歩く反抗期”としての最初の一歩を踏み出したのが「if もしも…」です。

 伝統ある全寮制のパブリック・スクールで、マルコム他少数の生徒が学校側に反乱を起こそうとする。決行日は創立記念の式典が行なわれる日。子供の反乱とはいえ、そこはマルコム、徹底的で、ショットガンで武装して超暴力の衝動をスパークさせる。クライマックスで何度もアップになるマルコムの顔つきには、冷たい怒りが充満していて、恐ろしくインパクトがある。

 学生紛争が盛んだった時期の作品だけに、時代の空気をビビッドにとらえていたのだろうけれど、こんな暴力的な映画がカンヌでグランプリを受賞したのは意外な気もする。監督のリンゼイ・アンダーソンは、この後、再びマルコムを主演に起用した「オー!ラッキーマン」や「八月の鯨」などを発表し、寡作ながら息の長い活躍を続けた。

 音楽的には特にふれる点はないが、1992年にリリースされたイギリスのインディーズ・バンド、スコーピオライジング/SCORPIO RISINGのデビュー・ミニアルバム、タイトルもモロの『if....』(写真)で、この映画のスチールが使われていた。バンド名にも感じるものがあり、店頭で見かけて、もちろん即買い。ノイジーなギターと性急なリズムがパンキッシュで、衝動を音に具現化したというべき内容。このバンド、その後2枚のフルアルバムを発表して消えてしまう。グルーヴ感の強いナンバーもあり、今聴いてもけっこうかっこいいが、再評価されるにはまだ時間がかかりそう。

 今となってはコロンバイン高校の事件をほうふつさせる内容だが、これは抵抗すべき旧態依然としたルールがあったころの話で、事情は異なる。もっとも今は今で、他に戦うべき相手が存在するのだろうけれど…。