私の好きなイギリス映画 7
ロバート・カーライル主演、アントニア・バード監督、1997年の犯罪ドラマ「フェイス」のお話を。
“顔役(フェイス)”と名乗る5人組の強盗団が造幣局の襲撃に成功するものの、分け前が想像以上に少なかったうえに、裏切り者の出現によって獲物はすべて横取りされる。その行方を追っているうちに、一味は破滅の道をだとる…という、フィルムノワールの時代から何本となく作られてきたタイプのストーリーで、目新しさは正直いって皆無。それでもカーライルふんする主人公=一味のボスのキャラクターが、かなりよい。かつては社会主義運動に参加していたものの、挫折してワルの道に走るが、今なお社会主義活動家として運動を続けている母親には頭が上がらない、という設定。リーダーシップがあって、仲間をうまくまとめてはいるが、一方で、運動家の負け犬となったことに対する負い目が見え隠れしている。“犯罪映画は嫌いだ。悪党がアップにならない"とボヤく姿も、カーライルの好演と相まってシブみのある妙味になる。まあ、この映画でのカーライルはアップだらけなんですが…。ともかく、強盗仲間に“お前の母親の生き方は尊敬すべきだ"などと痛いところを突かれた直後にクラッシュ/THE CLASHの『ロンドン・コーリング』がかかるのは絶妙のタイミング。
実は、この映画がツボにはまった最大の理由は、選曲が憎たらしいほど好みだったから。オープニングからしてポール・ウェラーの『EVERYTHING HAS PRICE TO PAY』。コレ、シングルのB面曲なのに、よくもまあ見つけてきたもんだと感心。さらにクライマックス〜エンドタイトルにかけて、ロングピッグス/LONGPIGS『ON AND ON』、ジーン/GENE『LONDON CAN YOU WAIT?』、ピュアエッセンス/PURECCENSE『SATNDING IN THE SAHDOW』と、UKインディー叙情派路線のつるべ打ち。どのバンドも今や忘れ去られてしまったけれど、例えるならパンクのDJが『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』『ニュー・ローズ』『電撃バップ』を、ギターポップ系のDJがウィーザー、ワナダイズ、ファウンテンズ・オブ・ウェインを、続けてかけるようなもので、これでもか!というほどの盛り上げ方なワケです。心憎いというか、あざといというか…。
そう、忘れそうでしたが、この映画ブラー/BLURのデーモン・アルバーンが強盗一味の下っ端坊主の役で出ています。
物語の結末とエンドタイトルのブリッジとなって、切ない気分を高めるりGENE『LONDON CAN YOU WAIT?』は、1995年の1st『OLYMPIAN』(写真)に収録。ただでさえ泣ける曲なのに、こんなラストで使われては、涙腺ひとたまりもありません。
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