僕は最低、君は最高
多くのスタンダード・ナンバーを残したミュージカル作曲家コール・ポーターと、その妻リンダの愛と葛藤の日々を描く「五線譜のラブレター」(12月公開)を観ました。
『ナイト・アンド・デイ』をピアノで弾き語る晩年のポーター(ケビン・クライン)の姿で幕を開ける、この物語。老ポーターが孤独の中で謎の演出家に導かれ、自分の過去を芝居小屋で見るというスタイルで進行する。リンダがいてこその作曲家人生であったことを、浮かび上がらせる作り。どんな偉人でも一人では、ただのダメ男に過ぎないのだなあ、と。
物語そのものがミュージカル仕立てで、当然ポーターが残したナンバーが全編に敷き詰められている。とりわけ、死期の迫る妻の目を見つめてポーターが歌う『SO IN LOVE』は印象的。名曲はそこに流れるだけで情感を盛り立てるものだが、その効果もあって泣けました。
ロビー・ウィリアムズ、エルビス・コステロ、アラニス・モリセット、シェリル・クロウが出演して、ポーターのナンバーを歌っている。コステロもクロウもクセのあるいつものボーカルは聴けず、ヨソ行きの声で歌っているような感がぬぐえないけれど、ミュージカルナンバーだから歌唱法そのものが異なるのはしょうがない。
シンプリー・レッドのミック・ハックネルにいたっては歌うだけでなく、ちょっぴり演技も見せていた。ジャケは、そのシンプリー・レッド、1987年の2NDアルバム『MAN AND WOMAN』。彼らはここですでに、ポーターの『EVERYTIME WE SAY GOODBYE』をカバー済み。アルバムとしては、ブルーアイドソウルの好盤だと思います。「24アワー・パーティ・ピープル」ではロックの神様に“契約しなくて正解だった。あれはクソだ”とまで言われたミック・ハックネルだが、ソウルの神様はきっとお許しになるでしょう…。
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