夢の実現

gakus2004-11-01

 チャウ・シンチー3年ぶりの新作「カンフーハッスル」は、武術映画をコメディーのフィールドに引き寄せつつ、「マトリックス」ばりのアクションを展開させる快作。感情描写がいささかウェットで、「少林サッカー」ほどのカタルシスはないものの、これはこれで味があると思います。で、今回はチャウ・シンチーが幼少のころからリスペクトしてきた1970年代のカンフー俳優やスタントマンが大挙して出演。とりわけ、「帰って来たドラゴン」のブルース・リャンとの、クライマックスの対決は見どころ。本日チャウ・シンチーに取材し、その辺の事情も訊いたが、共演できたことはもちろん、キレを失わない当時のままのアクションを目の前で見れたことに感動した、と語っていた。

 チャウ・シンチーのように、子供のころから憧れていた人をスクリーンに引きずり出してこれるのは、映画監督にしてみれば、まさに夢がかなったというべきなのだろう。そういうことを現実にやろうとするのは、比較的オタクな監督である。クエンティン・タランティーノは新作を撮る度に、昔から憧れていた人を出演させているし。

 ケビン・スミスもオタク監督だが、この人の「ジェイ&サイレント・ボブ/帝国への逆襲」も、オマージュが炸裂していた。クライマックスでは、「スター・ウォーズ」のマーク・ハミルを敵役に向かえ、スミス自身ライトセーバーを振るっての一大バトルを演じていた。“あのルーク・スカイウォーカーライトセーバーで戦ったんだぜ!”来日時に取材した際、「スター・ウォーズ」の大ファンであるスミスは嬉しそうに語っていた。子供の心を持ったまま大きくなった人でないと、こういうことを素直には喜べないだろうなあと思う。

 「ジェイ&サイレント・ボブ」のラストで、ケビン・スミスは別の好きな映画「プリンス/パープル・レイン」に敬意を表し、ザ・タイムのモーリス・デイを登場させ、同作で演奏される『JUNGLE LOVE』のパフォーマンスを再現する。訊けば、スミスは劇中でプリンスの曲を使いたかったが、御大プリンスに断られ、ザ・タイムなら許可するとのお達しを受けたらしい。まあ、夢もかなうこととかなわないことがある。チャウ・シンチーだって、可能ならブルース・リーにも出演して欲しかったはず。

 というわけで、ジャケはザ・タイム、1984年のアルバム『ICECREAM CASTLE』。『JUNGLE LOVE』の他にも「パープル・レイン」で演奏された『THE BIRD』を収録しています。