ホラー・ロッカー

gakus2005-02-09

 ウディ・アレンが2002年に撮った「HOLLYWOOD ENDING」が、「さよなら、さよならハリウッド」というタイトルで、この春日本公開される。

 主人公はアレン自身が演じる映画監督で、アカデミー賞を獲ったもののその後は落ち目というセルフパロディー的な設定。そんな彼が、プロデューサーである前妻から大作の演出を依頼されるが、撮影直前に途端に目が見えなくなってしまい、悪戦苦闘しながら撮影を続けるハメになる。神経症的なアレンのキャラが、いつものように光るコミカルな作品。

 この主人公、息子がいるが不仲で、ほとんど音信がない。息子はマリリン・マンソンみたいなミュージシャンになっていて、ステージではネズミを食べたりしているらしい。芸術かぶれの父と口論したのが最後に会ったとき…という設定。この親子の再会シーンが、けっこう笑える。評論家の言うことを気にする父に、息子は“評論家が何と言おうと、俺はネズミを食うぜ"という。ちなみに、このシーン、息子の部屋が舞台で、そこでかかっているのがホワイト・ソンビ(「マーダー・ライド・ショー」を撮ったロブ・ゾンビのバンド…だったはず)のナンバー。ジャズしか聴けないと思っていたウディ・アレンの映画で、こんな激しい曲が流れるとは思ってもいませんでした。

 それはともかく、ネズミを食うアーティストというのが、妙におかしい。オジー・オズボーンは、その昔ハトを食べたことで論議を呼んだが、今となってはこの人なりのユーモアだったんだろうな、と思える。こういうホラー的ギミックは、とりわけハードロック、ヘビメタ系のコンサートではよくあることで、アリス・クーパーなんかのシアトリカルな演出は広く知れ渡っている。そういうギミックに対して、10代のガキなら心をわしづかみにされたり、または必要以上に潔癖になって嫌悪したりするもの(私は後者でした)。笑って許せるようになってしまったのは、きっと年齢のせいなんだろうなあ…。

 ジャケは最初にホラーとロックを融合させた人物として悪名高い、ロード・サッチの1970年のファースト・アルバム『LORD SUTCH AND HEAVY FRIENDS』。ロード・サッチはこの後、切り裂きジャックにふんしたパフォーマンスで人気が出る。ちなみに、このアルバムはユニオンジャックのバカバカしいほど大ゲサなデザインに惹かれてジャケ買い。そこに記されているとおり、ジェフ・ベックやニッキー・ホプキンス、ジミー・ペイジジョン・ボーナムが参加した、意外に本気度の高いロックアルバムです。