あれは川、これは海

gakus2005-06-02

 夏の風物詩といえばサーフィン映画。今年は「ライディング・ジャイアンツ」なるドキュメンタリーが日本公開される。

 これは「DOG TOWN & Z-BOYS」でスケボー・カルチャーを描いたエクストリーム・スポーツのファン、ステイシー・ベラルタ監督がサーフィンの歴史に目を向けたもの。涼しげなサーフィンの映像を見せるというよりは、ビッグウェイブに乗ることを喜びとする、才能あふれるサーファーたちの人生や生き方に迫ったもので、限界に挑み、つねに生死の境で波に乗る者たちを見つめた硬派な内容。とはいえヘビーな映画ではなく、再現フィルムを織り交ぜた語り口はアップテンポで、気持ちよく観れてしまう。

 バラエティに富んだ選曲も妙味で、何が飛び出してくるわからない面白さがある。ディック・デイルのおなじみのアレやジャン&ディーンなどの定番サーフィン・ソングはもちろん、1950年代の逸話にはロカビリー(ストレイ・キャッツなど)が重なり、サーフィンのシーンはガレージやハードロック、デジタルロックで盛り上げる。そうかと思うと、DOVESの『FIRESUITE』がスコアのような自然さで流れてきたり。ダヴズのこのナンバー、同じくサーフィン映画『ブルー・クラッシュ』でも使われていたが、サーフィンとは縁のなさそうなマンチェスターのバンドの曲がサフーィン映画に好んで使われるのは妙な感じ。

 しかし、エンドクレジットにフィーチャーされるウォーターボーイズ/THE WATERBOYSの『THIS IS THE SEA』にはやられた。そうきたかー。ずっとユーモラスな選曲で映画は進んでいたが、ここで引き締まる。“今までの人生、あれは川だった。でも、これは海なんだよ"と歌うマイク・スコットのボーカルがまっすぐに響いてきて、グッとくる。映画のテーマにもっとも近い詞といえるのではないだろうか。できれば訳詩を字幕で出してほしかったが、クレジットの背景にもサーファーたちの姿が映し出され、時折インタビューも挿入されるので、しょうがないか。

 ジャケはもちろん、ウォータボーイズの1985年の3rdアルバム『THIS IS THE SEA』。リーダーのマイク・スコットは70年代末にジョー・ストラマーがそうであったように、誠実さという点で、アズテック・カメラのロディ・フレイムと並ぶ80年代の尊敬されるべき詩人ではないだろうか。日本盤には『自由への航海』という邦題がついていたが、それを“クサい”と感じさせないほどに真摯な歌い手であると思うが、どうでしょう。

ライディング・ジャイアンツ [DVD]

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