戦争の王
ニコラス・ケイジ主演の「アメリカン・ビジネス」(12月公開)は、武器商人が果たす恐ろしい役割を、綿密なリサーチに基づいて描いた社会派ドラマ。ケイジふんする主人公が実在の人物ではないか?と思えるほどリアリティのある構成。「ガタカ」「シモーヌ」で名を上げたアンドリュー・ニコル監督の意欲作です。
バッファロー・スプリングフィールドの1960年代の大ヒット曲『FOR WHAT IT'S WORTH』で映画は幕を開け、そのオープニングタイトルでは一個の銃弾が製造され、輸出され、ひとりの子供を撃ち殺すまでが、銃の視点で描かれる。
あの音は何だ。誰もが何が起こっているのか見つめている
スティーブン・スティルスが60年代中期のLAのストリートで起こった暴動にヒントを得て、この曲を書いたのは有名な話。この映画の暴力はストリート・レベルではなくインターナショナルなものだが、それでもピッタリくる。
ケイジふんする武器商人は、この仕事に手を染めたことで自分でも意外なほど商才があることを知り、ドラッグに目もくれず、セックスにも必要以上に手を出さず、この仕事にのめりこみ、ただただ武器を売りまくり、アフリカの独裁者から“お前こそ、戦争の王(Lord of War)だ”とお褒めの言葉(?)を授かる。共産主義が崩壊したことをTVのニュースで知り、ロシアから武器が手ら入れられることを、息子が初めて歩いたこと以上に喜ぶ。まさに筋金入りの死の商人。ブラックユーモアも含まれてはいるが、見ていてゾッとさせられる部分は多い。
先述のバッファロー・スプリングフィールドのナンバー以外で印象に残ったのは、妻が主人公の隠していた武器密売の仕事に気づくシーンでフィーチャーされるジェフ・バックリィの『HALLELUJAH』。空しく、物悲しく響いてます。また、昨日記したMAZZY STARがここでも使われていて、ケイジが帰宅した際に妻の部屋から『FADE INTO YOU』が聴こえてくる。ケイジの弟(ジャレッド・レト)が武器の代金代わりに得たコカインにおぼれていくシーンでのエリック・クラプトンの『COCAIN』はお約束。それと、主人公が武器密売に手を染め出したころのシーンではデビッド・ボウイの『YOUNG AMERICANS』が。
ジャケは一度、掲載したバッファロー・スプリングフィールドのファースト・アルバムはパスして、DAVID BOWIE、1975年のアルバム『YOUNG AMERICANS』を。
※「アメリカン・ビジネス」はその後、原題を活かして「ロード・オブ・ウォー」に改題されました。
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