まっすぐ歩く

gakus2006-01-19

 ゴールデングローブ賞のミュージカル=コメディー部門で作品賞を受賞した「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」は、ロカビリー・アーティスト、ジョニー・キャッシュと、カントリー歌手ジューン・カーターの結婚までの波乱の道のりを実話に基づいて描いたラブストーリー。キャッシュ役のホアキン・フェニックス、ジューンにふんするリース・ウィザースプーンが、同賞の主演男・女優賞をそろって受賞したこともあり、アカデミー賞戦線を賑わすこと間違いなしと見られている。

 ジョニー・キャッシュは歌手として成功して以来、ジューンに40回プロポーズし、ことごとく拒絶されてきたという。その都度、いろいろ理由があるのだが、ひとことで言うとジョニーの芯のなさということになるだろう。成功を収めるものの、父親との軋轢、最初の妻との不仲もあって、お定まりのドラッグ中毒コースを歩み、文無しにまで成り下がるキャッシュ。ともにツアーをしている最中、翌日もステージがあるにもかかわらず一晩中酒を飲んでフラフラになっているジョニーと仲間たちに、ジューンは“まっすぐ歩けない人たちばかりね"とイライラして言い放つ。ああ、ごめんなさい、僕もまっすぐ歩けてません…と観ていて心の中でつぶやいてしまうのは自分だけではないと思いたい…。“楽しむ"ということに関して何かにつけ理屈をつけて正当化してしまう、そんな自分の小ささがジョニーの姿を通してみえてきたり。というわけで、個人的にはツボのダメ男映画でありました。

 “まっすぐ歩く"=『I WLAK THE LINE』をはじめ、ジョニー・キャッシュの歌は、ここで初めて耳にするものばかり(といっても、歌っているのはホアキン)。で、一曲、“あ、これもジョニー・キャッシュの歌か"と改めて気づいたのが前半のステージ・シーンで披露された『GET RHYTHM』で、ライ・クーダーのカバー・バージョンで聴き馴染んでいた大好きなナンバー。靴磨きの少年と話していた歌い手が、“ブルーになったときはリズムに乗れ"という教訓を得るという歌詞があるが、そういえばこのステージの前に、ジョニーが街で靴磨きの少年を見つめているシーンがあった。

 ジャケは、そのライ・クーダー、1987年のアルバム『GET RHYTHM』。パックの黒いコーラスも最高。