困った人たち

gakus2006-07-14

 昨日の続き。「イカとクジラ」のダメ男たちについてです。

 この映画の時代背景は1986年ごろ。ピンク・フロイドの『HEY YOU』を自作曲と偽り、ハイスクールの発表会で歌った男の子は確かに背伸びしている感がある。というのも、この子のガールフレンドの部屋でかかっているのが、BRYAN ADAMS『RUN TO YOU』やTHE CARS『DRIVE』といった当時のビルボードのヒットチャートの定番。世代的に考えれば、この辺を聴いている方が自然で、当時活動休止状態にあったピンク・フロイドを聴いているのは少数派だったはず。でも、流行モノを毛嫌いしてマイナーなものを好むティーンの気持ちはわからないでもない…というか、よくわかる。

 自分も洋楽を好きになったのはそんな時期だし、最初はビルボードを追いかけていても、そのうち周囲で皆が聴き出すと今度はイギリスのチャートを探求するようになり、それにも飽き足らずインディー・チャートまでチェックするようになって…と、“自分だけがわかる"みたいなものをムキになって追い求めていたような気がする。なんとも尻の青い時期でした。

 しかし考えてみると、チャートも気にせずマイナーな物をアレコレ物色している今のほうが、ある意味、重症かも…。そういえば、「イカとクジラ」の男の子のダメ父ちゃん(演じるはジェフ・ダニエルズ)も知的な方向にスノッブで、家族で映画を見に行こうとした際、「ショート・サーキット」が観たいという子供に対して、“いや、「ブルー・ベルベット」にしよう”などとホザいていた。そういえば、ウディ・アレンも歳をとってさえ、こういうキャラを演じていたっけ。大人になっても人間の本質は簡単に変わらないものなのかもしれない。

 ジャケはTHE CARS『DRIVE』収録、1984年の大ヒット・アルバム『HEARBEAT CITY』。