スカスカですね…

gakus2008-02-12

 デビッド・クローネンバーグの新作『EASTERN PROMISES』は、いったいいつ日本公開になるのやら。前作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』ほどアカデミー賞では騒がれていないけれど、主演男優賞ノミネートのヴィゴ・モーテンセンは、なるほどの大熱演を見せていて、これがなかなか面白い。

 舞台はロンドンのロシア移民社会。ナオミ・ワッツ扮する助産婦が、14歳のロシア出身の少女の出産を手伝うも、この少女は死亡。彼女が遺した、ロシア語で書かれた手帳を手がかりに身寄りを探そうと、人の良さそうなロシア料理店経営者(アーミン・ミューラー・スタール)に翻訳を頼むが、この男は実はロシアン・マフィアのボス。ヘタレ息子(ヴァンサン・カッセル)とともに死んだ少女に売春を強要していた張本人であり、手帳と赤ん坊は組織犯罪の証拠となる。かくして、彼は手帳と赤ん坊の処理を、ポンクラ息子のお抱え運転手をしている切れ者風情のロシア人(これがヴィゴ)に一任するが…。

 冒頭、床屋での暗殺シーンからしてバイオレンスが炸裂。『スウィニー・トッド』のようにスパッとスラッシュするのではなく、カミソリを丁寧に往復させてゴシゴシと首を切る描写が登場。死体の指を切るシーンを、やたらと丁寧に見せるのもクローネンバーグ・マナー。そして、一見ストイックなヤクザ者ヴィゴの大活躍である。全米公開時からすでに話題になっていた、サウナで2人の刺客に立ち向かう全裸立ち回りの凄いこと!背中と腹を切りつけられ、おびただしく出血しつつ、それでもチ●コ丸見え、裏筋もしっかり見せて大暴れする姿は、ある意味、完全に突き抜けてしまっている。もっとも、アカデミー会員が評価しているのは、ロシア語訛りの英語を巧みに操ったことなんでしょうが…。

 そんな漢・ヴィゴと対をなすヴァンサン・カッセルのボンクラ・キャラが面白い。ボスの息子という地位を生かしてやりたい放題で威張り散らし、ヴィゴに対しても二言めには“これは命令だ!”と凄んでみせる。

 そんなヴァンサンが娼婦たちをはべらせ、ヴィゴに“今夜どの女とやるか選べ!”と命じるシーンがある。そこでオーディオから流れているのが、LIBERTY Xの“JUST A LITTLE"。5年前にイギリスでヒットした、いわゆるダンス・ポップなんだけど、今聴くと風化を感じずにいられないチープなアレンジ。ヴァンサンがヘタレに見えるのは、この曲の効果も大きいような気がする。

 ジャケはこの曲を収めたアルバム『THINKING IT OVER』、2002年リリース。


追記
イースタン・プロミス』の邦題で2008年初夏日本公開。

戦慄の絆 <デジタルリマスター版> [DVD]

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