下町ファンタジー

gakus2008-07-02

 ミシェル・ゴンドリーの新作『僕らのミライへ逆回転』(9月公開)は前半こそトンがった展開で笑わせるものの、着地点は意外にも人情劇だった。

 ニュージャジーにある、今どき珍しいVHS専門のレンタル店。この店の店長(ダニー・グローバー)は、店員(モス・デフ)に経営を任せっきり。そんなある日、店に入り浸っている無職の男(ジャック・ブラック)が現われたせいで、すべてのビデオテープがダメになってしまう。この男、発電所に忍び込んだために体に帯電していて、そのせいでテープの磁気が消去されてしまったのだ。それでも常連客は絶えず、『ゴーストバスターズ』を借りたいとか、『ラッシュアワー2』を貸してくれなど注文を付けてくる。困ったモス・デフとブラックは、ならば”自分たちの『ゴーストバスターズ』を作ってしまえ!、どうせあの客はこの映画を見てないんだし"と、ビデオカメラを手に撮影に当たる。で、この手造り映画が顧客にウケてしまい、彼らはさらに他の映画も手造りリメイクして品揃えを充実させる。実は店は市の都市計画にによって取り壊し寸前だった。彼らの手作り映画は、そんな店の救世主となるはずだったが…。ここまでが前半。後半はゴンドリーの前作『ブロック・パーティ』にも似たダウンタウンのファンタジーと化す。なので最初から最後までバカ・ノリを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。下町在住の自分としては、希望のあるエンディングにグッときてしまった。

 時代に取り残されたレンタルビデオ屋が舞台となるので、BGMもノスタルジック。舞台となる店は実在したジャズ・アーティスト、FATS WALLERの生家という設定になっていて、この人が残した"I AIN'T GOT NOBODY”が、この録音の他、モス・デフ、BOOKER T.らのカバーによってフィーチャーされる。メインテーマというべき、この曲の大らかな響きが、まずイイ。

 他は前日のエントリー『俺たちダンクシューター』と同様に、70年代ファンクが選曲の肝となる。先述のBOOKER T.率いるTHE MG'Sの"SUNNY MONDAY”がまるでスコアのようにハマる。最高!というわけで、ジャケはこの曲を収めた1971年のアルバム『MELTING POT』。

↓『ロボコップ』『2001年宇宙の旅』の手作りリメイクも飛び出すトレーラー。